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二重螺旋構造 記載者:黒もやし

~前回のあらすじ~
騙し合いって素敵!


 早朝、午前四時。
 夏とは言え、この時間帯はまだ暗く、人影も見当たらない。そんな中、ウィアド・フェオ・アルジズは自身の家の前で、待っていた。
 二時間ほど前に出掛けて行った、ラグズ・フェオ・アルジズ――精神は佐久間美紀のものだが――の事を。
 ふと、顔をあげて町を眺める。そこにあるのは、一見爽やかな朝の風景。だが、この景色には二つの異常が顔を覗かせていた。
 一つは、気温。ウィアドの吐き出す息は白い。おそらく、今の気温は10℃もいってないだろう。早朝とは言え、夏にこの気温は明らかに異常だった。
 もう一つは、気配。辺りからは、生き物の気配が完全に消えていた。まだ早朝で人がいないという事もある。が、だからと言って鳥や虫の気配までも消えているのは異常だった。
 その二つの異常によって飾られた世界は、まるで全てが滅亡した世界であるかのように見えた。
 二つの異常の原因。それはこの町、継色市の魔力の異常。
 この町が持つ魔力は濁り、穢れ、澱んでいる。少し前から始まったこの異常は、最近になって加速度的に増している。
 その異常を頭から追い出し、ウィアドは思考する。
 伏状真枝と禅城律について。
 彼等は、木崎を追ってこの町へやって来たと言った。また、木崎の捕獲に協力しろ、とも。そして、場合によってはウィアドの周りの人々まで被害が及ぶであろう事も。実際に、ミアは襲われ、ウィアド自身も戦闘へ参加することとなった。
 しかし、彼等は本当に木崎の捕獲が目的なのだろうか。
 単に木崎を捕獲したいのなら、誰にも知られず密かに片づけてしまえばいい。もし、彼等の手に余るようであれば、魔術協会へと増援を要請すべきだ。仮にも民間人である自分たちに協力を頼むなどという事はあり得ないだろう。
 では、何故自分たちに協力を求めたのか。
 ――わかるわけない。
 情報が足りない。そもそも真枝や律が魔術協会の一員だという事ですら確証はない。彼等の言う事が全て嘘だった場合、今の自分の考えはまったくもって無駄になる。
 それに、真枝や律を疑う前に最も疑わしい人物がいる。
 ラグズ・フェオ・アルジズ。または佐久間美紀と呼ばれる存在。
 ――もしアレが、動いていたのなら。
 魔術協会との関係はまだ切れていないはず。ならばそれを利用することも考えられる。もっとも、彼女に目的など存在するのかどうかすらも疑わしいが。
 場合によっては、木崎とラグズが繋がっていることも考えなければならない。二つとも、得体の知れない存在であることに変わりはない。敵になった場合、どのように対処するのか。さらに真枝と律が組
んでいた場合はどうすればいいのか。
 ――机上の空論、か。
 そう、証拠や根拠など何一つありはしない。だが、信じるに値する情報も無い。
 自分はどのように動けばいいのか。もし動き方を間違えた場合、すなわち最悪の場合、死に至る可能性もある。
 ――いや、最悪はそれじゃない。
 本当の最悪は『ミアが傷つくこと』。自分の命など、それに比べれば塵ほどの価値もない。
 ――なら、取る行動は一つ。
 それは、常に彼女の側につくこと。彼女の敵は自分の敵であり、彼女の正義は自分の正義だ。彼女の邪魔をする存在を踏み潰し、彼女を傷つける存在を皆殺す。彼女が死ねと言えば、死ぬ。彼女のために生きて、彼女のために死ぬ。ひどく単純な思考。だけど、
 ――これでいい。
 自分の立ち位置と、指針の再確認。今できる事は、これだけだ。
 そう思った時、
「……っと」
 足音が一つ、聞こえた。それは、待ち人の足音。その音がする方向へ、顔を向ける。
「ずいぶん遅かっ」たな、と。言おうとして。絶句した。
 そこに居たのはラグズ・フェオ・アルジズ。
 その身体は、死にかけていた。
 服の至る所が破れ、血が滲んでいる。左目は完全に潰れており、おそらくその眼に光を移す事は二度とないだろう。脇腹には、切れ味の悪い刃物で無理やり抉ったような傷跡があり、そこから垂れた血が足元に血溜まりをつくり出している。そして、何より酷いのは、その左腕。その腕はもはや、腕としての機能を失っていた。捻れ、曲り、歪み、もはや原型を留めていないその腕は、さながら出来の悪いオブジェのようにも見えた。
「やあ。……すまないね、みっともない有様を見せてしまって」
 その声は変わらず、無機質だ。その様子が、逆に戦慄させる。おそらくこれをやったのは。
「……木崎か?」
「ああ、そうだね。そうとも言えるだろう」
 答えははっきりとしない。はぐらかしているのか、それとも。
「状況の説明、それと手当を」
「必要ないよ」
 
 なに、と訝しむ前に。
 ラグズの右手がウィアドの首を締め上げた。

「がッ、あ!?」
「契約は無効。これよりラグズ・フェオ・アルジズは佐久間美紀へと還元される」
 手を振りほどこうとするが、できない。常人では到底発揮できない力。ウィアドにはどうすることもできない。
「悪いけれど、私はこれで退場さ。必要ないからね」
 振りほどくのは諦めて、手の破壊に切り替える。手に魔力を流し込み、強化。両手で掴んで、力を込める。
「もっとも、必要ないのは君も同じだけれど。いや、それを言ったら必要なものなど、何もなくなってしまうのだろうね」
 だが、折れない。鉄ですら破壊できる力は、ただの腕一本を折ることすら叶わなかった。
「そう、必要ない。人間も、魔術師も、吸血鬼も。必要だったのは、もっと別のモノだ」
 すでに満身創痍であるはずの身体。だがその腕の力は、弱まるどころか次第に強くなっていく。ウィ
アドの頸椎が軋み始める。
「おそらく、私は君や真枝や木崎達と会う事は二度とないだろう。私は必要とされていないからね」
 ウィアドの視界が見切れる。思考が千切れる。呼吸が途切れる。
「君は……そうだな、好きにするといい。木崎を殺しに行くも良し、真枝や律について行くも良し、一人で生きていくも良し」
 そう言って、笑った。無機質な声のまま。ラグズ・フェオ・アルジズではなく、佐久間美紀としての笑顔を浮かべる。
「じゃあ、最後にひとつ、」
 歓喜と焦燥と絶望と畏怖と憎悪と親愛を掻き混ぜて塗りたくったような笑顔を。
「――――――ラグズ・フェオ・アルジズに、喰い殺されないようにね」
 その笑顔を最後。
 ウィアドの意識は、黒く塗りつぶされた。
 




最後変えたよ!骨折らなかったよ!

というわけでウィアド君は五体満足でしたとさ。ちゃんちゃん。

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No title

まあなんだ、ちゃんと読んでないから内容は分からんが…
書き方で誰だかわかるのは流石だなww
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しなび。

Author:しなび。
なんていうか、もうどうにでもなーれ☆

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