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ひつまぶしに書くか by公爵

なんか文章、人気っすね
勝手に厨カテゴリ入れちゃいましたw



 雪が覆い被さるやうに降り積もります。赤い牡丹の花弁のやうに、真っ赤な雪が。
 けれども私の咎はゆるされはしないのです。私のかけら程のいのちが今ここでむなしく散りゆくとしても、私の咎がゆるされることはありません。 花がいつしか朽ちて、枯れ落ちて、地に還るやうに、私はこの咎を抱えながら、地に還るのでございます。最期は、辞世の句すらもありません。
 私の心を蝕むのは今や、あなたへの恋慕や思慕だけではないのです。あなたを殺した、咎や後悔だけではないのです。
 あぁ、私もゆきます。決して癒えない傷痕を抱えながら、あなたの柔かく暖かい腕に抱かれて――
序章:三月/疼雨

 三月にはもう、桜の花弁が散り急ぐようにしてひらひらと地に落ちていった。世渡舟一はそんな世の儚さを憂う暇もない。事実を追求する新聞記者としては当然だが、一人のヒトとしては些か感慨に疎く、舟一はそんな自分自身が厭で仕方がなかった。
 雨戸を締め切ったままの部屋。机上の洋灯(ランプ)の仄かな光に照らされながら、舟一は様々な新聞社の記事に黙々と目を通していた。どの記事も移り変わる世の情勢を捉えあぐねているようである。明治新政府の発足から十余年、様々な動きが水面下ではあるようだが、どの新聞社もその実態を掴むことはかなわないでいた。
 夜のうちにいくつかの記事に目を通したが、これまでで特筆して目立つような記事も無く、どこの新聞社もいまいち攻め手に欠けているように見えた。しかし、だからと言って守勢で乗り切れる程世の中も甘くは無い。そう、このままではいけない。この激動の時代を生き残るには、情報が要となるだろう。南蛮の影響にも目を配らなくてはならない。とにもかくにも、やらねばならない事は文字通り山のように残されていた。
「舟一さん、いらっしゃいますか? お茶をお持ちしましたのですが、入ってもよろしいですか?」
 静まり返った書斎にノック音が響き、舟一は目を通していた他社の新聞から目を離した。紙面の色調に慣れてしまった為だろう、飛び込んできた色が目に痛い。流石に頃合いだな、休憩しよう、と深呼吸をひとつすれば、古書独特の臭いと埃に噎せ、部屋の空気の悪さに眉を顰めた。だが、疲れている姿を彼女に見せるの無粋だろう、と舟一は眼鏡を外し、自らの頬を叩いた。
 そういえば最近締め切りのままにしていたので、そろそろ最近弛緩しきっている自分の気持ちを変える意味でも、換気しておこうと、人知れず溜め息を漏らす。
「唯衣かい? お入りよ。僕と君の仲だ、そんなに余所余所しくする必要は無いだろうさ」
 舟一は窓を開けながら、唯衣を促す。空が暗いうちから耽っていた為、高くなっていた陽を視界に収めた瞬間、身体に時間間隔が戻り、眠気が襲ってきた。
「失礼します。……もしかしてお邪魔してしまいましたか?」
 暫くの間の後、畏まった態度で書斎のドアが開いた。舟一の昔馴染みの夏目唯衣は、小さく会釈を交わして書斎に入る。机の上に重ねられた新聞に目を向け、申し訳なさそうに俯いた。
「いや、いい。僕も丁度休憩せねばと思っていたところだよ」
 それならいいのですが、と唯衣は呟いたが、尚も申し訳なさそうにしている。女子が繊細な事は良い事なのだが、唯衣は繊細過ぎやしないだろうか、とも思ったが、敢えて口には出さなかった。
「それより、何か作ってはくれないかい? まだ朝餉も済ませていなくてね」
「舟一さんの事ですから、きっとそうでしょうと思って、簡単なものですがご用意しましたよ」
 ――つくづく出来た嫁である。皮肉に聞こえなくもない事が玉に瑕ではあるが。
 などと思いながら、適度に腹を満たす。満腹になってしまうと、きっと寝てしまうだろうから、腹五分目ぐらいまでで箸を置き、舟一は静かに手を合わせた。
「もうよろしいのですか?」
「ああ、有難う。おかげで午後も頑張れそうだ」
 舟一は伸びを一つして再び眼鏡を掛けた。しかし、唯衣の顔は優れないでいる。
「また、隈が出来ておいでですよ? 最近無理をなさってやしませんか?」
 唯衣はただ舟一の心配をしているわけではなかった。舟一は生まれつき身体が弱く、肌の色も薄かった。そのくせ身体の異常をなかなか口に出さないような強情さを持っていた。
「大丈夫さ。この件が済めば……そうだな、今夜は眠れるだろうさ」
「そうですか。くれぐれも、お大事にしてください」
 唯衣はそれ以上追及しなかった。図らずも口論になって、余計な体力を使わせるよりはましだと分かっていたからだ。尤も、唯衣はいつもこうなので口論になった事はただの一度も無かった。


 ぽつりぽつりと雨が降ってきたのは夕刻間近の赤い空からだった。湿気は本や書物の大敵である為、昼過ぎから僅か開け放していた窓を閉め、舟一は空の様子を窺っていた。
 西の空に沈む夕日は雲に隠れていたが、まだ空は辛うじて明るかった為沈んではいない事は分かった。
 不安定な空模様――それはまるで今の世の中を表しているようだった。幕府の政権下では割と不自由しなかった
人間もこれにより不安の渦中へと身を置く事になる。新聞記者という仕事もそう、不安定な情勢である事を逆手に取り発展した事業である以上、文句を言う事は出来ないが。


……ぶつ切り。もともと連載するつもりも無くやっつけです。ごみーんにー。

Tsuikkey
足してくか。

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乙です。

文章がすごい好みだコレ! うわあ素敵!

続き、楽しみにしてます。
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しなび。

Author:しなび。
なんていうか、もうどうにでもなーれ☆

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面白そうだから入れてみた。今日のカードはこれっ!
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