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鋼鉄の塔、鋼鉄の騎士

こんにちはかの星です。元レインです。よろしくお願いします。


瀬口がスチパン書けって言われてて、レポートばっか書いてる生活のリハビリに丁度良いかなと思って書いてみた。
構想40分/期間3日/実時間20時間ぐらい


ワードの機能上、段落は全てコピーするときになくなっちゃったけど、ごめんね☆











下を見れば、街は蒸気の白煙と燃料の燃える黒煙で溢れていて、上を見れば真っ青な空は無く、黄ばんだ、無駄に広い『上』があるだけだった。



発展したこの国の中でも一際大きいこの街には、一本の巨大な煙突が立っている。それは今、世界で事実上唯一と言える『蒸気機構』の企業のものであり、本社の建物から出ている煙突の大きさ、数は街の中どころか世界中で最高のものであった。
街は、いわゆる企業城下町という奴で、企業お抱えの新聞社に勤める人々が、大ニュースを伝えに街を駆けている。

「蒸気機構以外の機構の破壊?ずいぶん物騒じゃねぇか。昔から同じことばっかやってるぜ、あそこはよ」
「噂じゃ、昔あった他の蒸気機構作ってるトコも何かあったって話だぜ。小さな店は特に酷かったらしい」

通りに並んだ隣同士のそれぞれの店の店主が、配られた新聞について話し合っている。

「商売敵がそんなに憎いかね。うちなんて隣同士に建ってても仲良くやってるってのに」
「そりゃ食い物屋と工具屋なら仲良くできるぜ」

そう返して、工具屋は笑った。つられて食い物屋も笑うが、近くを通った蒸気機構の音で二人の笑いはかき消される。この街では似たような音がそこかしこで鳴っているが、慣れている人間でもうるさいものはうるさかった。
二人はほんの少し気分を害した様で、食い物屋が先に言った。

「蒸気機構以外の機構ね。うるさくないなら大歓迎だ」
「おいおい、うちの工具を使わない奴だったら商売あがったりだよ。そういや、うるさいと言えば……」

工具屋の言葉は大きな音でかき消された。その音は、この街では皆聞きなれている、歯車がまわり、金属がぶつかりあう音を一度に鳴らしたらこうなるのではないか、といった音だった。そして音のほう、街の外の方向には、鋼鉄の塔から何かが打ち出されているのが見えた。

「あぁ、アレだアレ。何やってるか知らないがうるさいよ。役に立ってる蒸気機構のほうが全然マシだと思うぜ」

迷惑そうに、そしてどうでも良さそうに工具屋が言ってから間をおいて、食い物屋が思い出した風に言う。

「アレ、空を飛びたいってガキがやってるらしいぜ。金持ちの道楽かね」
「ふーん。ま、うるさい以外俺らには関係ない話だね」



蒸気機構の始まりは、西の海から流れ着いたカラクリ師という職業の男が、蒸気機関を利用した腕を作ったことであった。男がこちらに流れてきてから出来た技術者の友人と、互いに技術を教えあい、競い合った末にできたものであり、その機構は当時の技術者達に衝撃を与えた。人の力はもちろん、それまでの技術の出せる馬力と動きを遥かに超えたその機械は蒸気機構と呼ばれ、その技術は瞬く間に広がった。農具や兵器はもちろん、多くのものに利用され、今日では知らぬものは無いと謳われている。
蒸気機構は、神の恵みともされる。当時、西の海は誰も行ったことが無く、悪魔がいるとか、不可侵の国があるとか、海が途切れているとか、様々な噂や憶測があるだけで、未知の領域だった。そんな未知の領域から流れ着いた男が伝えた高等な技術、そこから開発された蒸気機構が、神の恵みであると思う人が出るのはそこまで不思議なことでは無かった。



少年は蒸気機構を余り好いてはいない。名はエディといい、街の郊外に暮らしている。

「何が神の恵みだよ。無駄に重くて、空をこんなにしやがったモンが神の恵みなら、神はよほど俺たちが嫌いなんだろうな」

鋼鉄の塔のすぐ下でエディは、塔の機械部分をいじりながら文句を吐いた。塔は10メートル程の二本の長方形の柱のようなものが、平行に伸びたような形状をしており、それぞれの柱の面のうちの一つには、これまた平行に何かをセットするかのような形状をした溝が伸びていた。
エディの隣に立って、作業を覗き込んでいる逞しい体をした中年の男は、

「こんなにしやがったって、お前は見たこと無いだろ。こんなになる前の空なんざ」
「でも、じいちゃんばあちゃんがそう言ってたし、親父だって俺に空が青かったって話す。見たことはないけど、そうだったってことぐらいは知ってる」
「意味わかんないこと言ってないで手ぇ動かせ、手」

隣の男はエディの父だった。肺を患って久しく、逞しく見えるその体は、患う前より大分衰えたという。母は同じ病ですでに倒れた。
少年の外見は、どこと無く鷲を思い浮かばせる。硬く真っ直ぐに伸びた短めの茶髪で、その前髪をゴーグルで上げていた。鋭いが、あどけなさを残した金の眼は母譲りだと父親は言う。上空での強風を避けるために革の長袖と長ズボンを着たその外見は、全身が茶色の羽毛で覆われた鷲の子供、といった表現がとてもぴったりだった。

「仕事の勉強になるからってくず鉄渡して、ほっといたのが失敗だったな。こんなもん作りやがって」
「良いじゃねぇか、勉強になるんだから」

エディの家は、蒸気機構の小さな工房だった。昔はオリジナルの蒸気機構も作って売っていたが、街の中心にある企業、『大煙突(おおえんとつ)』という愛称で呼ばれているそれに圧力を受けてしまい、今はそこの下請けをやらされている。
他の工房も似たようなもので、蒸気機構のパーツは全て大煙突が作っているものになっている。
エディの作っている塔、『射出塔』と呼んでいるそれも大煙突のパーツのみで作られていた。

「クソッ、駄目だ。大煙突の製品じゃあ、十分な出力が出ねぇ!……かといってオーダーメイドするような金も無いし……」
「働きゃいつか溜まるだろ」
「俺は今すぐこの胸糞悪い煙の上を見たいの!」
「バカヤロウ、何時までも人の言ったこと引きずってんじゃねぇよ」
「せめて、自分で何か作れればな……」

父親の言葉を、何か考えようとしている振りでエディはやり過ごした。母親の最後の言葉は、青い空が見たい、だった。祖父母も似たようなもので、昔の空が見てみたい、という言葉をよく言っていた。エディにとって空は好奇の対象であり、射出塔は工房を下らない工場にした大煙突に対する反抗なのだ。
前者については父親も気づいているが、後者は作った本人もそれを意識したことは無かった。塔は、少年のような年頃によくある、育ってきた環境への反抗の象徴なのだ。

「作るのは止めとけ。これを見ろ」

エディが何をするか分からない、そう思った父親は、何か思いつかれる前に新聞を見せた。渡されたそれを見てエディは驚いて言った。

「じょ、蒸気機構以外の機構の断罪だぁ!?何考えてやがる……」
「さぁ。蒸気バカの社長のことだから、本気で断罪しようとしてるんじゃないか」

記事には、神の恵みである蒸気機構以外の機構は邪法であり、それを作ろうとするものは悪魔と契約した邪なものであるとし、数日後までに破棄しない人間全てを探し出して断罪する、と書かれていた。
発表を行った大煙突の社長は、蒸気機構を神の全能を人に理解できる形で与えたものと主張する団体の支援者であり、幹部なのだ。蒸気機構に心酔しており、商売熱心でもあり、過激な人間でもあった。
親子はアホらしい、と思ったが、あいつならやりかねないな、とも思った。

「でもうちは関係ないだろ?とっくの昔にぶっ潰されたんだから」
「いや、実は関係ある」
「えっ!?」

と、エディが驚くと父親は大したことなさそうに言った。

「蒸気機構に入れる薬品をいくつか作っててな、それも対象なんだ。まぁ、その辺に捨てればいい」
「なんだ、じゃあ問題ないな」
「そうだ、だから余計なこと言ってないで手を……」

また言うのか、とエディが思ったところで、父親は咳き込みだした。非常に酷いもので、血が混じることも多々あった。蒸気機構が作られてから流行りだした病だった。先ほどの記事では、手始めにこの病の原因が蒸気機構だなどと言うものを処罰した、と書かれていた。

「親父、今日はもう休んだほうが……」
「いや、まだだ。お前も分かってるだろ。俺の咳が、母さんの死ぬまえの奴と似てるって」
「だから休んだほうが……」
「だからこそだ。俺が死んだら、お前は自分で飯を食ってかなきゃならん。俺以外にだれがそのやり方を教えるってんだ」
「…………」

このやり取りはもう数度目で、エディはこの頑固親父はもうテコでも動かないと分かっていた。だから、さっさと一人前になって口出しされなくてもいいようになりたいと、彼は願っている。

「分かったよ全く。手を動かせばいいんだろ、手を」

新聞を置き、射出塔に向き直ると、エディの背後で何かが倒れる音がした。その直後に先ほどより更に酷い咳をする音が聞こえた。驚いて振り返るとまるで、当たり前だ、といった風に父親が咳をしながら地面にうずくまっている。

「オイ、親父!?親父ぃ!」

エディが呼びかけると、父親は何か言いたげに顔を上げてしゃべろうとしたが、咳と血が出てくるばかりで何も分からなかった。とりあえず帰って休ませるために、担いだ。父親は、自分に構わず作業を続けろ、と伝えたくて振り払おうとした。しかし、エディは担ぎにくさを感じただけで、全く意図に気づくこと無く家のほうへ向かいだした。父親の体力はそれほどまでに落ちていたのだ。



やはりここから眺める景色は良い、と彼は思う。街からは二つの色の煙が立ち上り、空はそこから出た煙の色で染められている。その全てが自ら考案した蒸気機構によるものだという事実もあり、より良いと思った。この景色が自らの手で世界に広げられていくイメージをすると、更に良いと思った。要するに、彼は蒸気バカだった。会議中になんとなく振り向いて見えたその景色は、彼を恍惚とさせた。

「社長?」
「ん……。ああ、すまない」

一時的に彼を現実から放した目の前の景色と自らの未来のビジョンを、彼は口惜しげに振り払い、会議に集中することにした。

「それで、今回のだ、……断罪、についてですが、これに反抗する動きが見られます。いかがいたします?」
「迎え撃つ。むしろ探す手間が省けるし、反抗するということは、自ら邪法であると証明するようなものだ。その上今度軍に提出する蒸気機構の見直しも出来る」

なぜ証明になるのか、聞かされたほうは全く理解できなかったが、言った人物がそういう人間であるので、次の質問に移ることにした。これで社長として非常に優秀なのだからタチが悪い、と思った。

「それで、だ……、断罪当日に攻め込まれた場合を想定した捜査隊と迎撃隊の割り当ては、どういたします?」
「それは後で憲兵の連絡書が後で届く。その後にしよう」

他に聞くことはあるか、と言ったのに対し、お待ちくださいと言われると、彼はまた外の方を見た。すると、思いついたように、

「そうだ、街の外のほうにある塔があるだろう。アレは住人に迷惑をかけるばかりで役に立っていないそうじゃないか。ああいうのは駄目だ、蒸気機構にふさわしくない。ついでに潰してしまえ」
「え?あぁ、はい」

あの塔の持ち主は小さな下請けの工房だったので、他の大きな組織のことに比べれば些細なことであり、紙の左端に書いたぐらいで済まされた。この社長にとっても、自らの主義から反し、気に入らないからついでに潰す、程度の認識だった。



数日後の朝になっても、エディの父親の呼吸器はどうにか話せる程度までにしか回復しなかった。呼んだ医者は、この病はまだ治す薬が無いと、世話の方法だけ伝え、すぐ帰ってしまった。父親は医者に感謝をしたが、エディにはそれがどうしてか分からなかった。

「エディ、倉庫の、樽が、あるだろ?アレに薬品が入ってる。捨てておいて、くれ」
「うん……」

2人とも、原因は違えど喉がガラガラになった声で喋っていた。片方は消えそうなろうそくの様で、もう片方は涙をこらえる子供そのものだった。互いに、先のことが見えており、抵抗することは止めていた。

「あと、これ」

父親は、ベッドの横にある引き出しからL字型のものを取り出した。

「銃、だ。これも、邪法、らしいぜ」
「うん……」
「遊、んだりするなよ」
「するか、バカ」

銃は、蒸気機構に兵器として敗北し、前世代の遺物と言われてこの時代にはほとんど残っていなかった。とりあえず、それをポケットにしまった。

「親父やお袋、エリナ、も言っ、てたせいか、俺も、空が見た、くなってきや、がった」
「……」

エディは、母親もこうして、死ぬ直前は喉の調子にも関わらず喋っていたことを、思い出した。

「大丈夫、だ。設計のほうは、慣れが足りん、が、お前は、目がいい。工具の、使い方が正確、だ」

ヒューヒューと苦しそうな息はもう弱まり、耳を立てなければほとんど聞こえない。

「でっかく、なるぞぉ、お前は。なにしろ、俺の息子、なんだ」

母親は、自分が生まれたときも今の言葉と似たようなことを言っていた、と話していた。
息は無くなり、少年は泣かぬよう息を押し殺している。音は無かった。その意味を理解した少年は、この場にいることが嫌になった。だから、外に駆け出た。どうにもならない状況から逃げ出したいと思う少年の、わずかばかりの抵抗だったのかも知れない。

「なんでだよ……」

理不尽だと思った。だからふいに口に出た。その口に出た疑問はなぜこうなってしまったのか考えさせた。

昨日食わせたもの所為か、蒸気機構の所為か、不甲斐ない自分の所為か、あるいはその全てか。

感情がめちゃくちゃだった。思考もめちゃくちゃだった。挙句の果てには空がいけなかったのかと、訳の分からないことまで考えた。

足元から乾いた音がして、足に物が当たる感触があった。捨てられた新聞紙が風で流されてきたのだろう。それは、父親が倒れた日のことを思い出させた。同時に記事の内容の中に、病のことが書かれていたことを思い出した。病は蒸気機構が原因であると主張するものを処罰した、と。
頭から信じる気は無かったが、それは蒸気機構への怒りと不満を助長させた。横を見ると、蒸気機構で出来た射出塔があった。

「……ッ!」

ぐちゃぐちゃになった感情で、それに八つ当たりをしようとするが、出来ない。
その目的は、子供のころからの夢で、母の、父の、祖父母の口から出た願いで、その過程は、自身の試行錯誤と父から受けた教えだった。何度かこのポンコツと、殴りつけたこともあったが、今の感情で殴ることは、別の何かを傷つける気がして、出来なかった。
そうして、助長された感情は中で燻らざるを得なかった。

「……。そうだ、クソ蒸気バカのアホパレードは今日だ」

朝の冷たい空気が、少し冷静にさせた。薬品を捨てに行かなくては、と倉庫に向かう。



先ほどは自棄になりかけたが、作業している内に落ち着いてきていた。ただそれは先ほどとの比較で、いつもと比較した場合非常に荒れている。
怒りを向けるべき方向が分からず、先のことも分からず、どうしていいか、全く分からなかった。父から言われたこの作業が終わった後のことは何も考えてない、考えることが出来なかった。

「……っはぁ」

ため息を吐き、作業用の蒸気機構、ミダンタに乗り込んだ。キャタピラの左側には、無数の支えが生えている金属の腕が一本、右側にはバランスのためのおもりが付いた形をしたものである。
その辺に捨てる、と言っていたが大丈夫だろうか、とミダンタのハンドで樽を持ち上げながら考えていると、恐らく、射出塔の方向からでたと思われる、金属同士を強くぶつけ合う音が聞こえた。

「なんだぁ!?」

と思わず叫び、ミダンタに乗って射出塔の方へ走る。射出塔の脇に大きな蒸気機構が見えた。軍向けに売られるパーツを中心に構成されたそれは、軍用蒸気機構の試作型で、ハイク-タイプMと呼ばれていた。太く長い車体は八つの大きなタイヤ支えられ、両側には二本のアームが付いている。

「何やってんだよ!おい、……おい!」

しかしエディにとってそれが何かはどうでも良く、その蒸気機構がアームで射出塔を破壊しようとしていた方が問題だった。

「知るか、依頼主に仕事でやれって言われたんだよ。この機構は今回みたいな作戦に向かないからこんな所でこんなもん折らなきゃならないんだ。怪我したくないなら向こう行ってな」

乗っていた男は無造作にそう言った。
ハイク-タイプMは山を行軍するために作られた機構で、とにかく悪路を走行するだけの安定感と、木をなぎ倒して進むパワーを伸ばしたものだ。射出塔を折らせるのは、そのパワーのテストのつもりなのだろう。

「こんなもんだと?この野郎!」

先ほど射出塔に向け、止めた感情が目の前の男に向いた。
全速力でミダンタを前に進ませ、引いたアームをフルパワーでハイク-タイプMの操縦者に撃ち出す。しかし、相手の操縦者は軍用の蒸気機構についているシールド、厚い金属の板を操縦席の前の辺りから出した。
シールドは車体から上へ生やすような構造をしており、ミダンタのアームを受け止められれば、ハイク-タイプMの腕がエディを襲うことになる。しかし、作業用であるミダンタのパワーでは軍用のシールドを破壊することは出来ない。これは当然、絶対のことで、エディの運命はこの二つの機構の差をみれば明らかだった。相手の操縦者はそう思っていたし、エディも第三者であればそう思っていただろう。だから少し派手な金属音が鳴るだけだと思っていた相手は、当たった瞬間の爆発を、一瞬それが爆発だと理解できなかった。エディもそれは同じで、爆発の衝撃で押されたアームは吹っ飛び、ミダンタはバランスを崩して横転、エディは地面へ投げ出され、転がった。

「小僧……、やってくれんじゃねぇか……」

シールドはひしゃげ、折れ曲がって車体の左下の方にぶら下がる様な感じでかろうじて残っていた。
男は怒り心頭といった様子だった。声に反応して男のほうを見ると、目の前には銃が転がっていた。

「実はな、……大煙突の社長殿からは、色々許されてるんだぜ!!」

男は吼えながら、ハイク-タイプMをエディの方に走らせる。迫る蒸気機構への恐怖や、目の前の男への怒り、爆発でのパニック、そしてエディの中に焼きついた新鮮な死のイメージは目の前に落ちていた銃を取らせるには十分だった。パン、と蒸気機構に比べればあっけない音が響く。狙っていた一瞬が、妙に静かで長かった、とエディは思う。
男は、急に襲ってきた激しい痛みで操作を誤ってしまった。脇に落ちていたミダンタに乗り上げ、車体は派手に宙を舞う。悪路走行に特化した機構でも、金属の塊に乗り上げてはお手上げだった。男は空中へ投げ出されて、ゴキ、と聞こえだけなら小気味良い音を立てて、地面に沈んだ。
静かになった場で、エディは何が起きたのか口に出して整理しようとする。

「銃……、は親父に渡された奴か。弾入れっぱなしかよ。じゃあ、あの爆発は……」

そこでエディは、ミダンタのハンドには薬品があったことを思い出す。

「爆発も親父のお陰で、蒸気機構も親父の奴、か。守られたようなもんだ」

ただ、原因はカッとなって突っかかった自分だということは、恐怖が薄れてくれ、怒りも消えてきた頭には明白だった。
とりあえず相手の安否を確認しにいくと、明らかに首が普段ならありえない方向に向いていた。混乱していて、大したショックにはならなかったが強い罪悪感が襲う。間接的な面も見えるが、彼がほぼ直接の原因のようなものだった。
しかし、エディは完全に自分が悪いと思うほど殊勝な人間ではなく、向かってきたそっちも悪いじゃねぇか、と死体に向かって吐いた。

「……。あーあ、曲がっちまった。動くみたいだけど、真っ直ぐには飛ばせないな」

射出塔は、ハイク-タイプMのパワーを受けて曲がってしまった。むしろ動くほうが奇跡といった状態だ。
こっちに向けるとどこに飛ぶかな、となんとなく曲がった先を見たエディは眼を見開き、つぶやく。

「大煙突……」

もはやエディの大煙突に対する不満は、耐えるのに限界を迎えていた。皆が倒れた病も、奴らの所為だと言われたら今は頭から絶対そうだと信じるだろう。もしかしたら、エディは全てを彼らに奪われたのかもしれない、と思うとせめて一矢報いることはできないかと考えてしまう。

「バカらしいぜ。だけど、バカやって失くすもんなんて命ぐらいになっちまった」

それはまさにバカらしい奇跡だった。射出塔が折られそうになって、止めようとするとつい先ほど死んだ父親の遺品に助けられ、結局曲がってしまった射出塔は大煙突の方向へむき、その上動かせるのだ。
神どころか、父親まで彼自身に復讐しに行けと言っている気にさせる偶然の連続。しかし、エディは自分に聞かせるように言った。

「分かってる。親父がいたらバカヤロウって怒鳴られてる。話に聞くような神様が、復讐をやれ、だなんていうわけない。だからこれは、俺のワガママだ」

このバカらしい奇跡にちょうどいいぐらいのバカやってやる、あの大煙突でふんぞり返ってる蒸気バカに文句を言うためだけにこのチャンスを使う。エディはそう決めて、準備に取り掛かった。



ここからの景色は会議室より良い、と彼は思った。そこは彼の仕事場で、城の様にそびえる大煙突の最上階に位置していた。いや、むしろ最上階が彼の仕事場であるといったほうが適切である。いくつかの部屋に分かれているが、その全てが彼個人のスペースだった。
ある人が、バカと煙は高いところが好き、と言ったら彼はそれはほめ言葉だと喜ぶぐらい、彼は高いところが好きだった。ついでに言えば、煙ではないのでバカである。

「やっぱりこの日に来たな」
「迎撃に多くまわして正解でしたね」

下のほうでは、試作機を操る雇われ兵と憲兵が入り口を守るのに対し、別の企業に雇われた者や、私情で来た者が蒸気機構や、それ以外の機構で作られた兵器で攻め込もうとしていた。
後ろで何かを破壊するような轟音が響く。仕事場に入ってきた男は、ここなら安全だろう、と思っていたのかはたまた社長が危機感のない馬鹿者だったのかは分からないが、後ろで轟音が鳴ったときの驚き方には大きな差があった。

「お、来たか」
「な、何がです」

なんてこと無いように社長は答えた。

「発表してから数日の間に新しく入ってきた社員が何人もいてね。優秀な人は片っ端から雇っていったんだ。その中に混じってたんじゃない」
「混じってたんじゃない、じゃないですよ!分かっててやったんですか!」
「まぁね」

男はとても困惑した。目の前の人間がバカだとは知っていたが、そのバカな行為のとばっちりがこんな形で来ると思っていなかったのだ。今までのとばっちりは、街中での広報に付き合わされて非常に恥ずかしい思いをするだけだったが、物理的な危険が身に襲い掛かってくることはない、とずっと思っていた。

「なんで自分から受け入れるような真似を!」
「だって優秀な人物を逃すのは惜しいし……。あ、君戦える?というか、戦えるのは知ってるけど」
「なんで軍止めたと思ってるんですか。契約書の内容には従ってくださいよ」

男はバカすぎて忘れてしまったんですか、と言おうと思ったが、会話をスムーズに進めるために止めた。

「いや、彼らを止めるだけで良いよ。実はもう一つ引き入れた理由があってね」
「……なんですか?」
「試作で作ったアレ、この機会に使いたいなって思ってね。アレは蒸気機構の素晴らしさを見せるにはうってつけだよ。ただ、時間がかかるから……」
「……なるべく堅い奴で出ます。準備が出来たら合図を送ってください」

男は働かなくてもすむぐらいのお金が溜まったら、この会社を辞めようと思った。

「優秀だね。ボーナス弾んでもいいくらいだ」

機構の準備の為に部屋から出た男は、これで命を張るようなことがなければいい会社なのに、と非常に残念に思った。ついでに今回のボーナスで止めるのが早まるな、とも思った。
部屋に残った社長は準備に向かおうとするが、突如外でなった爆発音と本社全体に響く振動にビクッとする。外の様子を見ようと外のほうへ駆け寄ると、目の前の空を、下から上へ鳥のような何かが素早く過ぎ去った。何かを叫んでいた気がした、と言うことは人なのかも知れない。反射的にそれを追い、見上げる。正体を明かさぬまま、鳥のような何かは上空で翻り、急降下していった。ある程度下に飛んでいくと見えなくなったが、それが建物の中に入ったことは明白だった。

「面白い奴だ、この街で私より上へ行くとは。一体どこの誰だろうな」

社長は喉を鳴らして笑いながら、最上階の奥の部屋へ向かっていった。



射出塔のしくみはシンプルなものだ。エディが子供の時に考えたものなのだから、当然である。鳥を模した人工の翼を背負い、それごと自分を全力で射出するだけの塔。
しかしそれを達成するには多くの試行錯誤があった。まずは設計の必要が当然あったし、発射用のレールを平行にするのにはとても苦労したし、材料の調達も要る。翼だって、その果てとは言わないまでも、進化してきた。テストの時に、落下して大怪我をしたことだってある。材料をどこからか盗んできて、こっぴどく怒られたこともあった。
夢を叶えるために作り、夢とともに進んできた。エディにとって射出塔とは、息子であり、作品であり、兄弟であった。翼だって同様だ。
その翼に薬品の入った樽を括りつけているエディは自分以外の全てを失って自棄になっているだけだと、分かっていた。

「だけどよ……」

バカの作った機構の煙を吸いすぎて、自分までバカになったのか、とエディは笑った。こんなバカみたいな奇跡は、バカみたいな感情でバカみたいに扱わなきゃつまらないだろと、先ほどからそんな考えが頭を支配して、どうにも止まらないのだ。

「うし、途中で地面に叩きつけられたらそこまでだ。それもいいだろ」

蒸気機構の推進器も作ってはいたが、重いし熱いしで話にならなかった。ずいぶん形の変わってしまった射出塔に翼をセットしながらエディは心底面白そうに、

「中身がペンキだったらどうだろうな、それも良いかもな」

と呟き、笑った。
常人が彼を見たら、狂っているなどと言うものもいるだろう。多分普段のエディがみても、何を考えているんだ止めろと言う。
しかしエディはもはや一人で、周りには人はいなかった。そうだ、自分は一人で、親父はもう死んだんだと思いながら翼を背負う。背負った彼は、言った。

「ちょっと、クレームつけに行って来る。帰ったら葬儀するから待っててくれよ」

脇にある仕掛けを動かし、もう何百回、何千回と味わった発射までの待ち時間を、動かすときになるガチ、ガチという音を、これでもかというぐらい堪能して、慣れに慣れたタイミングに合わせて呟く。

「ご、よん、さん、に、いち」

いち、といった瞬間には道行く人に見せればその人まで楽しくなるような笑みを浮かべていた。だが、事情を知るものが見れば不気味の一言だろう。そんなことは彼自身にも分かっていて、だからこそ突き放すように、もう戻らないかのように、

「ゼロ!」

大きくエディは叫んでやった。朝の彼は嘘のように、または突き抜けて壊れてしまったと思わせるように。射出塔も、それに応じるように叫んだ。聞くものはいない。
空を駆け始め、大煙突まで一直線まで進む。下を見ると、射出塔は大きく音を立てて崩れていた。しかし悲しみは無かった。逆に、本当に良くできた奇跡だと、さらに気分を高揚させた。
禿げた地面も、無駄に整った道も、蒸気機構の上げる煙も、矢のような速さで越えていく。頬に当たる濁った空気を思いっきり吸い込み、言った。

「あー!胸糞悪いぜ!」

そこまで近くはないはずの大煙突まで、あっという間についてしまう。樽の重さで高度を下げることは無かった。エディはまず、蒸気バカはどこにいる、と思った。そしてすぐに思いついて大声を出す。

「上に決まってんだろ!煙野郎が!」

社長の趣味で所々が金属で出来ているこの鋼鉄の城の、とにかく上へ上へと向かって、強く樽をぶつけられるように、括りつけている紐を解いた。鋼鉄の城へ向かっていく樽を見下ろしながら、

「ぶっ飛べ!」

そう言ってから、エディは壁ギリギリで上へ上がっていく。落ちていった樽は下で派手な爆風を起こし、翼を更に押し上げた。そして彼の高揚感も上がっていき、鋼鉄の城の頂上を越えようとしたあたりには、意味も無く叫び声を上げてしまった。
そして上空で翻り、穴が開いているかどうかも確認せずに爆破した辺りに向かっていく。その姿はまさに、狂った鷲のようであった。
エディには、爆煙の中でも穴が何処にあるか分かっていた。そして穴が開いていることを確信していた。しかしその理由は先ほどから奇跡が続いているから、といった無鉄砲な理由で、根拠など何一つ無かった。
十分に速度を上げてからパラシュートを開く。爆破した付近に近づくと、エディは工房と似た匂いと温度を頼りに穴を探し、煙以外何も見えない中で着地しようとした。しかし、パラシュートの端が破壊した壁の中に埋め込まれていた補強材に引っかかり、盛大に投げ出される。

「あ、がっ!」

そこかしこを打ちつけながら転がり、止まった。翼までもボロボロになってしまったが、やはりエディは構うことなく、爆煙で咳き込みながら起き上がる。

「ホントに上手くいきやがった」

咳にも、騒ぎで人が集まってくるのではないか、という自分の予想にも構わず、地面で笑い転げる。落ち着いては、朝から起こったことを思い出し、笑い転げる。
何度かそれを繰り返してだんだんと落ち着いてくる。落ち着いてからまず考えたのは、なんて文句をつけてやろうか、だった。何が落ち着いた、だ、まだバカのままじゃないかと自分で自分の評価をして、なんだかおかしくなり、また笑おうとすると、声がかかった。

「ちょ、ちょっとちょっと。こんな騒ぎを起こして、何したいのかと思ったら、笑って地面を転がりに来たの?」

女性の声だった。エディは、恐らくすぐそこにいる人間が、自分のことをこのアホパレードの参加者だと思っているようだ、と思った。しかし自分がしに来たのは文句をつけることで、笑い転げに来たのも大体似たようなものかとも思い、笑おうとしたが、このバカみたいな行為は人に言わなきゃ勿体無いと、笑いをこらえながら言葉を返す。

「似たようなもんだ。ちょっとクレームつけにきた」
「愉快なことね。みんな必死だって言うのに」

まだ煙が充満する中で見えてきたのは、蒸気機構に乗った少女だった。
正確にはわからないが蒸気機構は先ほどの男が乗っていたのと同系統の機構だと、エディは予想した。少女の姿は煙で分からないが、試作機に乗っている、ということは大煙突の人間であり、敵以外の何者でもない。であるならば、すぐにエディは捕らえられてしまうだろう。

「バカに構ってる暇はないわ。さっさと上へ行かないと……」

しかし、目の前の少女は一目見れば明らかに不埒者であると分かるエディを捕まえようとはしなかった。当然が起こらなかった疑問は、すぐに口をついて出る。

「なんだよ。捕まえないのか?」

蒸気機構をターンさせ、去ろうとする少女は答えた。

「あんた、私たち側の人間じゃないの?」
「俺が大煙突の社員に見えるのか」
「もしかして、下で起こってる騒ぎを知らないの?」
「知らない。というか、俺の質問の答えてくれよ」

煙が少し晴れてきて、少女の姿が見えるようになった。蒸気機構の上で呆れたような顔をしている少女は赤毛の髪を後ろで結び、サイズが明らかに余った革のつなぎを着ていた。つけている軍手は機械油に塗れており、頬の辺りにも少し汚れがある。

「今回の断罪とやらに反対する企業や人が集まってて、私は数日前に内側から攻撃するために入社したの」
「入社した、ってよく警戒されなかったな」
「そんなの知らないわ。ここまで上手くいくなんて思ってなかったし」

質問に答えて用は足りたと、少女は蒸気機構を前に出していく。
乗っているのは、軍用試作機であるハイク-タイプSであった。蒸気機構は大きいため、屋内戦は基本的に歩兵同士で行われるが、この機構は屋内戦をより有利に進めるならば蒸気機構を屋内で使えたほうが良い、というスタンスで作られた。細かい操作と人を弾き飛ばして進むだけのスピードが重視され、その代わりパワーや持久力を失ったものだ。シールドも、歩兵が使用する蒸気武器を耐え切るぐらいの能力しかない。カップ状の操縦席に、手足が付いた形をしている。

「……、バカに構ってる場合じゃなかった」

爆破された部屋から出て行こうとした少女の前方には、別の蒸気機構がちょうどこちらへ向かっている姿があった。向こうも気づいたのか、こちらに向かってくる。
試作型であるハイク-タイプDだ。タイプSと同じスタンスであるが、タイプDはタイプSを奪われ、相手に量産されたり使用されたりした時の想定をしたもの、屋内仕様蒸気機構を倒すための屋内仕様蒸気機構で、タイプSから見れば非常に相性が悪かった。タイプSではシールドを破りきれず、逆にシールドを破られて負けてしまう。

「新入り……、さっき向こうで騒ぎを起こしてた奴だな」
「…………」

相手は顔を確認しながら言った。少女の担当は戦うことではなかったので、蒸気機構に乗っていることは不自然だったし、雇われ兵は入社した人間全員の顔を見せられていた。その中で数少ない少女であり目立つ彼女は、言い逃れが出来なかった。

「……ふん!」

不意打ちのつもりでタイプSのアームをぶつけようとするが、シールドに阻まれる。
相性も悪かったが、地形も非常に不利なものだった。一直線の廊下で、本来広かったはずの横にある部屋は先ほどの爆発でほとんど無くなっている。タイプSの方がスピードや小回りの効きが良いが、このような場所ではどちらも生かすことは出来ない。逃げるという手段は、背後に散らばった瓦礫で失われている。どうにか不意打ちで勝つしかなかった。しかしその手段も防がれてしまう。

「ガキが勝てるわけ無いだろう」

相手がタイプDのアームを突き出したのを見てシールドを出すが、タイプSのシールドでは他の蒸気機構のパワーを真っ向から受けた場合、すぐ折れてしまう。
今の場合にもそれは同じで、むしろ吹き飛んだシールドに首を飛ばされなかっただけマシと言える。
少女は出されたタイプDの右アームを掴もうとするが間に合わない。タイプSのアームは瞬発力とパワーでタイプDに劣っているのだ。そもそもタイプSはその足を使って機構ごと人に当たっていくのが主、つまり人を倒すためだけの機構だ。アームはおまけのような扱いである。

「投降しろ。抵抗するなら容赦はせん」

相手は少女の技量が分かったのか、少し離れてから話しかけてきた。しかし、少女にはここで引き下がる気はなかった。
タイプSの瞬発力を生かしてタックルをし、機体を横転させて逃れるという行動を思いついたのだ。

「嫌だ!」

叫ぶとともに飛び掛るが、相手もそうすると予想しており、アームで受け止められる。

「この程度は、誰でも思いつく」

アームを引いて、殴りかからんとするタイプDに、ここまでかと思い少女は目を瞑ったが、パン、という乾いた音が聞こえた後、前のほうからうめき声がしたため、目を開けた。

「な……なんだっ……」

男は未知の激痛で、操作ハンドルを放してしまう。音のほうを見ると、煙の中で誰かが何かを構えているのが見えたが、何かは分からなかった。
そして、しまった、と思った。明らかな隙を曝してしまっているのだ。片手は使えず、もう片方は激痛の元を抑えるのに使ってしまっていて、今の自分は格好の的だった。

「え……?あ……っ!?」

しかし、目の前の少女は何が起こったか分かっておらず、ハンドルを握り締めたまま唖然としているだけであり、攻撃の気配は無かった。
男はすぐさまターンし、廊下から去っていった。未知の武器と蒸気機構を、負傷したまま相手取るつもりは無く、エディ達の存在を知らせるために逃れたほうが良いと判断したのだ。

「……え?なんなの……」

しかし、そんなことは撃たれた人間と撃った人間しか分からず、少女には何が起きたのか理解できず混乱していた。

「おい、怪我は無ぇか?」
「うん……」
「本当に大丈夫かよ」

少女がボケッとしているので、エディはシールドが頭にぶつかったのではないかと思った。

「うん……。一体何が起こったか分かる?」
「あぁ、なるほど」

と、呆けていた理由が分かったエディは手元の銃を見せた。

「これって、銃?もしかしてあんた、銃作ってる家の奴なの?」
「違う。俺は大煙突の家でやってる下請け工房……の長男ってところかな」

少女があわや、といった瞬間になるまでエディはずっと撃つタイミングを狙っていた。タックルを受け止めてアームを引いた姿は、エディから見れば隙だらけだったのだ。
狙いを定めて引き金を引くときは、やはり妙に静かで長かった。ただ、実は頭を狙っていたのだが、外れて肩に当たってしまったのはエディも予想外だった。
その理由は銃の精度が悪いから、というものなのだが、そんなことはエディに分かるはず無かった。

「何か大煙突の気に触れるようなものでも作ってた?」
「作ってたけど、捨てたよ」

なんとなくエディは、大煙突に、という言葉は隠しておいた。目の前の少女は質問することが多く、話がややこしくなりそうだ、と感じたからなのかも知れない。

「じゃああんなことしてたの?」
「さっきから質問ばっかだな」

この質問には答えられそうに無いと思ったエディは、はぐらかすことにした。少女ははぐらかされたことは分かったのだが、

「色々あったのね。答えたくないならいい」
「そうだな、色々あった」

はぐらかしたのは複雑な事情があったから、という解釈で、エディにあったこととは全くかけ離れていた。聞くことは聞いた、と少女は再び上へ向かおうとする。

「待ってくれよ。上へ行くんだろ?乗せてってくれよ」
「えぇ……」

関わりたくない、と顔に出ていた。やっていたこと、その目的、持ってるもの、どれをとっても変という言葉がぴったりだったと思ったからだ。

「助けただろ」
「そもそもあんたがあんな大爆発起こしてなければ、ああならなかったわ」
「振り落とされてもいいからさ。銃が何かの役に立つかもしれないし」

銃は確かに使えそうだな、と先ほどのことを思い出しながら少女は考えた。いざとなったら小回りの効くこの機構で振り落とせば良いとも考えた。

「わかったわ。あんた、名前は?私はエミリー」
「エディだ。よろしく」

カップ状の操縦席の装甲につかまりながら言った。

「いきなりだけど、飛ばすわよ。仲間が先に行ってるの」
「……」

そう言われて、エディは口を閉ざす。舌を噛むからだ。エディが腕に力をこめたのを知ってか知らずか、そのタイミングに合わせたようにハイク-タイプSは走り出した。
タイプSの本領は、その瞬発力にある。廊下に立つ人間を弾き飛ばし、曲がり角ではやすやすと曲がる。動作の精密さは非常に高いが、複雑な動きをするには高度な蒸気機構の操縦スキルを要求される。建物の中に人間しかおらず、操縦者が熟練者であるなら一体で建物を制圧することが出来るし、別タイプの蒸気機構に打ち勝つことも出来るが、逆に未熟な人間が使えば直進することと曲がることだけで限界で、階段を上ったり、咄嗟に攻撃を避けたりすることは出来ない。
エミリーはどうであるか、というと、酷い、の一言だった。

「爆発があったから見て来いっていうから来てみたら、とんだ拾いものだわ」
「……」

エディは何もいえなかった。代われ、とすらも。直進では猛スピードでフラフラと進み、何度か壁に打ち付けられそうになるし、曲がり角では時々機構をぶつけて止まったりしている。正直初心者以下と呼べる有様だった。
なぜ見て来いと言われたか、エディはなんとなく分かった気がした。
そんな危険の中でなぜエディが代われと言わないかというと、やはり舌を噛みたくなかったからだ。ただ、操縦席は安定しているのか、エミリーは勝手に喋っている。

「私の家は、蒸気機構の動力源である蒸気機関に代わる機関を作ろうとしてたわ」
「……」
「でも、流行病でお母さんとお父さんはもう動けなくなってるの」

エディがもし今喋れても、何も言えなかっただろう。今朝のことを思い出したからだ。

「いつも機械、特にその機関ばっかいじってて、あんま遊んでもらったりしなかったんだけど、必死になって作ってるところみて、なんとなく羨ましく思ったこともあった」
「……」
「それで、倒れて動けなくなったとき、二人が残すのはあの機関と、あとは私ぐらいかなって思ってたときにあのふざけた新聞が来てね。カッとなっちゃって」

エミリーはひたすら自分の事情を話した。先ほど自分が質問ばかりだったので、自分のことも話したほうがいいかな、となんとなく思ったからだ。更には、死にそうになったさっきの瞬間が彼女にそうさせた。誰かに知っておいて欲しかったのだ。
エディは、機関のことを聞きたかった。空を飛ぶことへの好奇心もあるが、機関のことを聞き、エミリーの親のことを知ることで、彼女のこの話を、彼女にとって有意義に出来ると感じたからだ。

「バカらしいよね。分かるよ」
「……」

エディがそうしたい、と思ったのはエミリーと自分の、ここに乗り込もうと思った根底の感情が似ていると思ったからだった。ただ、エミリーは両親のため、という思いからで、エディは自分がそうしたかったから、というワガママである。
エディは、自分のほうがもっとバカだ、と言いたかった。

「……」
「……」

エディが何も言えなかったので、エミリーもついには黙ってしまった。
その間にもハイク-タイプSはよろめきながら進んでいく。最上階への階段の前までの途中、誰とも会うことはなかった。
慎重な人間なら罠と考えるだろう。逆なら、先に進んだ仲間がもう倒したのだと考えるはずだ。しかし、最上階にいる人間がどういう性格をしているか知っているこの街の人間なら、きっとこう答える。奴がバカだから、と。
エミリーもエディもこの街の人間だった。だから構わず階段を上ろうとする。何度も落ちそうになる危なげな動きだったが、エディはなぜか、代わってくれと言い出せなかった。
すでに開かれた扉の前にどうにかたどり着くと、4体の蒸気機構が部屋の中にいた。内3体はすでにまともに機能させることは出来ず、操縦者達は困惑していた。ただ、それは唯一無事な蒸気機構の操縦者も同じだった。

「こ、困ったな。牽制でやったつもりなのに、止まっちゃったよ。ハイクのS、D、Hか……。設計から見直さないと」

男が乗っていたのはハイクではなく、軍向けに生産されているディガーナーのカスタムタイプだった。ディガーナーは物量作戦によく使われるコストの低さとパワーを重視した機構で、数と力で押して勝利するというシンプルなスタンスで作られた。男のディガーナーは一部隊を指揮するものが乗る、シールド、装甲の防御力と移動スピードを上げた指揮官タイプのカスタマイズが施されている。立ち回りによる強さ、使用者の安全を守るといった面では量産機の中で高いランクに位置するものだ。

「社長の準備がまだなのに。これじゃボーナスアップも見込めない……」
「は、歯が立たねぇ……」

ハイク-タイプHに乗っていた男が呟く。タイプHは、屋外と屋内の中間で使用するものだ。操縦席がある巨大な金属の板に手足がついた形をしている。アームの片方には建物の壁や扉を破壊するためのパーツが取り付けられており、この蒸気機構の場合は杭を強く前方に打ち出すパイルドライバーがついていた。他のパーツはドリル、削岩機など、アームによる攻撃と大差が無いため、このチョイスは良いものと言える。動きが鈍重なタイプHなのだから当然の選択であった。

「タイプSは作られた目的が目的だから仕方ないかもしれないけど、タイプDはパワーが無さ過ぎる。でも逆にタイプHじゃ遅いし……」

しかしこの男の技量も凄まじいものであった。ただの既製品のカスタムタイプで、まだ設計に穴があるとはいえ、試作機3体を同時に相手取ったのだ。
その試作機3体はどれもどこかしら破壊されていて、まともに動くのは無理だった。タイプSはその機動力の元である脚部を、タイプDはアーム両方をもがれ、シールドをひしゃげさせ、タイプHはタイプDのアームが下半身の間接部分に差し込まれて動かせなくなっている。

「……新手、しかも子供か。やりにくい相手だ」
「エディ!降りて!」

ディガーナーがエディ達の方に向いてエミリーが降りろと叫んだので、エディはつい降りてしまった。エミリーのハイクはディガーナーの方へお世辞にも真っ直ぐとは言えないコースで走っていく。

「え、エミリー!シールドは!?」

戦闘に使う蒸気機構にとって、シールドは操縦者の命綱とも呼べる代物だ。それ無しで突っ込んでいくのは自殺行為である。しかし、ハイクとディガーナーが駆ける轟音でその声はかき消される。

「な、なんという動きだっ!う、うわっ!」

ディガーナーの操縦者は戸惑った。真っ直ぐではないのだが、時々真っ直ぐになったり左に行きたいのか右に行きたいのかよく分からなかったりするエミリーの動きは、見るものが見れば非常に判断に困るものだ。
エミリーはその動きのまま突撃し、アームを前に突き出す。しかしその攻撃はシールドによって阻まれる。

「え、えっ!」

それどころか受け流すようなシールドの出し方をされ、ハイクはまるでアームの繰り出すパンチを外したときような動きをした。
戦闘の勘があるものならば、その場で体勢を立て直そうとする。だが、ディガーナーの操縦者はその隙を狙い、パーツを破壊しようとする。初めから準備していたかのような位置にアームが引いてある。
しかしその隙は無かった。ハイクは派手な音を立ててヘッドスライディングの体勢で前に滑っていった。要するに、転んだのだ。予想外の動きをされ、ディガーナーのアームは空を切るだけで終わった。

「クソッ、とんだ盤狂わせだ。その辺の傭兵より手ごわいよ」

どうにかハイクを起き上がらせたエミリーの方を見て言う。

「それは、タイプSだな。怪我させたらごめん!」

ディガーナーが向かってくる。エミリーはシールドが無かったことを思い出し、バックステップで、薙ぐように振るわれたディガーナーのアームを避ける。しかし、着地が上手くいかず転び、大きな隙を曝してしまう。
ここで、相手が通常の兵士であるなら追い討ちをかけるところだが、ディガーナーの操縦者は空を切ったアームに疑問を持った。

「君、シールドは?」
「そんなもんとっくに取れて無くなったわよ!」
「なんとやりにくい……」

ディガーナーの操縦者は、エミリーの戦意を失わせるために、シールドをどこかへ飛ばそうと思ったのだ。だがシールドは初めから無かった。
この間にハイクは立ち、ディガーナーに迫る。しかし先ほどとはうって変わって、ディガーナーは攻撃をシールドで防御することなく、逃げ回り出したのだ。もちろん何も仕掛けていないというわけではない。隙を見てはパーツを破壊しようとするような動きを見せる。

「ちょっと!なに考えてるの!?」
「何もかんがえてないさ!」

互いに何度か似たような動きを繰り返していたが、ディガーナーがアームを繰り出したときにハイクがバランスを崩した。ディガーナーの操縦者にとってチャンスであったが、やはりまたアームを止める。
いつの間にか、エディが操縦席が撃てる位置まで動いて撃とうとしていた。今回もまたタイミングを窺っていたのだ。しかし、引き金を引く直前に、シールドが出される。

「……っ。時々、君みたいに銃を持ってる人がいるから、戦場は怖いよね」
「嘘だろ……」

エディは驚愕した。相手はこちらを見ずにシールドを出したのだ。
つまりそれは、轟音で聞き取りにくく、あるかどうかもあやふやな足音だけで誰かがこちらに何か仕掛けてくると予想したということであり、そのような用心深さを前に自らの策が通じるかどうか不安に思ったのだ。エディは別に、銃弾を当てようと思ったわけではない。とにかくその場に縫いとめられれば良かった。だからとにかく、銃を一発撃った。

「シールドを突き抜けられる訳無いだろ」

乾いた音と金属音が響くだけで、何も起こらなかった。しかし、ディガーナーの操縦者はそれで終わることは無いと考えていた。
いまの音が合図だったのか、エミリーのものとは別のハイク-タイプSが残った足を使って体当たりをしてきた。ディガーナーはそれを大きく跳んで避ける。そして、背後で起こった音と振動を敏感に察知し、その場で飛び上がる。ハイク-タイプHのパイルドライバーだった。轟音とともに、鋼鉄の大杭が床に突き刺さってひびを入れる。こうなれば残ったタイプDもかかってくると踏んだのだが、周囲を見ても影は無い。だからディガーナーの操縦者は先ほどのパイルドライバーの音にまぎれていた音の正体に気づく。そして、着地してからその場を一気に離れた。

「やるねぇ!もしかしたら負けてたかもしれないよ!」
「アイツっ、どういう勘してんだ!」

タイプDは板の形をしたタイプHを前に倒す役割をしていた。気づかれないようにパイルドライバーの発射と同時にタックルさせたが、エディの前に立つ男はそれも察知して、目的が何かもあの一瞬で理解したのだ。
タイプHが倒れる前に、操縦席から逃れた、タイプHを動かした男も驚いていた。エミリーが戦っていた間に作戦を立て、それが絶対通じる名案だと思っていたのだ。
重量がかなりあるタイプHが倒れると、パイルドライバーが先ほど破壊した床の辺りが崩落し、タイプHごと下の階へ落下していった。
考案したエディも、聞かされた三人の男たちも、タイプHが倒れてくるのを避けられることまではまだ予想できていた。そしてその避け方は紙一重のもので、あのような長距離のジャンプをするとは思っていなかった。もしディガーナーが予想の通りの避け方をしたなら、そのまま下の階へ落ちていったことだろう。

「前に一度、似たようなことされたんだ。それがなかったら、落ちてたね。そのときも落ちたし」

しかしディガーナーの操縦者は、それを難なく避けた。自分の作戦は所詮素人の浅知恵だったのだろうかとエディは思った。
もはやここを超えるすべは無い、そう思った直後だった。奥の部屋から建物全体を揺らすような振動が起こった。

「なんて派手な合図だ。まぁ、奥に行っていいよ」

突如、ディガーナーの操縦者は言った。何を言っているのか理解できなかった。なぜディガーナーから降りているのかも分からなかった。

「どういうことだよ……」
「うん、社長が自分でテストしたいって蒸気機構があるんだ。雇われの身だから何も言えないし」

降りてきた男は普通の出来る従業員といった感じで、先ほどの鬼神のごとき操縦技術からはかけ離れた外見だった。派手さの欠片も無い黒い眼と黒い髪で、顔は柔和である。こんな男があの様な動きをしていた、というのはにわかに信じられなかった。

「お、俺たちは仲間がつくのを待つ」

エディ達より先に着いていた男達の一人は言った。他の二人も同じ意見らしく、うなずいている。蒸気機構が奥で待っていると聞かされた時に蒸気機構が無いなら、その判断は正常である。
誰一人として、無人のディガーナーを奪おうとする気は起きなかった。目の前の穏やかそうな青年がさせていた動きを間近で見たものなら当然のことだ。
エディの策が開始されてから終始眺めているのみだったエミリーは、己の力量不足を痛感して、この後自分はどうすればいいのか迷っている。先ほどのディガーナーの動きを見てそう思わなかった人間は、操縦者本人以外は一人も、いや、一人を除いていなかった。

「まぁ、通してくれるなら行くぜ。エミリー、どうする?」
「えっ……。その、私も待つわ……」
「そうか、ここまで運んでくれたのは助かったぜ」
「ねぇ、待ってよ。銃だけで行くつもり?」

エディは止まった。しかしそれはここまでの過程を全て思い出せば、何を今更、と言えるものだ。
エディはそう考え、止まるのはちょっと話をするためだ、という理由にしてしまう。

「おう。それ貸してくれるんなら話は別だけど。」

足元に転がっているハイク-タイプSを指して言った。

「本気なのね。良いわ、持ってっても。もらい物だし」

ディガーナーの操縦者が、あげた覚えはないよ、と言い、こちらに近づいてきた。

「もしよければ、あのディガーナーを貸してあげよう」
「な、え!?」

先ほどから奇行が多いかの操縦者に対し、エミリーは疑問の声をあげる。

「なんで渡すんですか!」
「え?なんだよ、人がいいことしたと思ってるときに」
「貰えるっていうなら、貰うぜ」
「貸すだけだよ」

結局答えてもらってない、と思ったエミリーはもう一度聞いた。

「さっきまであんな動きで私たちを止めてた人が、なんでいきなり親切になるんですか!」
「うん。社長の機構のテストって言ったけど、相手が銃を持ってるとはいえ生身だったり、シールドが取れちゃったタイプSだと、やりごたえが無さ過ぎる、って文句言われそうな気がしてね」

エディはもう、ディガーナーに乗り込んでいた。

「言われた仕事は機構の準備が済むまでの足止めで、ボーナスが出るんだけど、このままじゃちゃんと仕事しろって言われてボーナスが出ない気がしたんだ」
「全然良いことしてないじゃないですか……」
「結果だけ見れば良いことしてるんだよ。そうしようと思った理由を知らなければ、もっと良いことをした気分になる」
「……」

この人はまともな人であって、社長の命令でこんな変なことしてるのかと思っていたエミリーは、別の方向性で変な人間である、と評価を改めた。
ディガーナーは動き出し、奥の部屋へ向かっている。扉はかなり大きかった。そもそも今彼らがいる部屋もかなり高さと広さがある。それこそ、蒸気機構で暴れても問題ないほどに。当然社長の趣味である。
扉の前に差し掛かった辺りで、エディは思い出したようにエミリーに向かって言った。

「お前の親が作ってた機関、もし良かったら見せてくれ!」

同情ではない、と言い切れるものでは無かったが、少年は純粋に、エミリーの親が作っていたと言う機関に興味があった。もしかしたら、空を飛ぶためのヒントになるかも知れないと思ったからだ。

「……!分かったけど、生きて帰ってこなきゃ見れないわよ!」
「どうにかしてみるぜ!」

別に、生きて帰る気はそこまでなかった。エディの発射された銃弾のような感情は、失うものが自らの命一つになった時からむき出しのままだ。
ただエミリーは、もし帰れた時、自分の夢に先を見せる方法を知っているのではないかとも感じて、少年は自棄になった自分の感情をほんの少し抑えた。
いつのまにか下に来ていたディガーナーの元操縦者が、蒸気機構で作られた奥への扉の仕掛けを動かした。扉がひとりでに開いていく。エディは、あのバカに相応しい仕掛けだな、と思った。

「……。忘れてないよな、俺の目的……」

少年は、何度も何度も自分の目的を、自分の中で反芻した。自分は文句をつけに来た、この戦いは義や天命によってなされるものでなく、自分のワガママである。これよりずっと乱暴ではあるが、彼の中で反芻される思考は、おおよそこれに似た言葉で埋め尽くされている。何と言うかはまだ決めていなかった。エディはそんなもの、会ってから決めればいいと、考えるのを止めた。

「ようこそ、私の部屋へ!」

後ろで扉の閉まる音が聞こえる。目の前に立っていたのは、中世で着られていた鎧のような形をした蒸気機関だった。そこかしこに神を象徴するマークが彫ってあり、鋼鉄の騎士だ、とエディは思った。

「そのディガーナーは……。それの持ち主はどうした?」
「そこで扉を開けてくれたよ。あんたと戦わせたいからくれるんだってさ」

操縦席が内部にあるのか、社長の姿は見えなかった。しかし、エディには彼が笑い転げる様を、容易に想像できた。

「なるほど、中々の仕事だ。して、君はここに何をしに来たんだ?」
「あんたに、文句をつけに来た。本当にそれだけだ。ちなみに文句はこれから考える」
「……。……」

距離が遠くて、装甲が壁になっているから互いに聞こえにくくて、二人は大声で話した。かすかに内側から響いてくる声は多分、笑っているのだろうとエディは思った。

「君、ここまで飛んで来た奴だろ?いや、そうに決まっている」
「よく分かったな。今は飛んでないぜ?」
「あんなバカなことする人間が、君みたいにバカなことを言う人間と別なわけがあるか。すぐ分かる」

エディは、どう文句をつけようか迷った。何を言ってもこいつは笑いそうだ、と感じてしまう。
街でよく見るような、オールバックの柔らかな金髪、意思の強そうな青の眼をしたバカ騒ぎをしているスーツの男を、エディは思い出した。

「さて、もう分かっているね?私が設計し、私が指示を出し、私が組み上げ、私が完成させた、私の駆るこのマシュヌビアは、わが社の特別なクライアントが頼む高級なパーツの中でも、更に素晴らしい出来のものを使っている。ただのカスタムしただけのディガーナーでは、よほどの技術が無ければ勝てないよ」
「言ったはずだ、俺は文句をつけに来ただけ。あんたに勝つつもりは無い」
「それは結構!」

マシュヌビアが、地面を蹴って向かってくる。恐ろしいほどの馬力だった。あまりに速すぎて、反応が遅れる。どうにか突き出されたアームをアームで受け止めるが、マシュヌビアのアームが横に払い、ディガーナーの巨体が横に飛ばされる。
腕もとんでもない馬力だと思いながら、体勢を立て直した。

「ちょっと狙い外しただろ!」
「マシュヌビアの性能を見せ付けたくてね!」

先ほどと同じ速度で向かってくるマシュヌビアのアームを、シールドで受ける。その受け方は、前の操縦者の動きを真似たものだった。見よう見まねでやったにしては良くできていたほうで、マシュヌビアのバランスは崩れそうになった。

「この動きは!」

社長は素晴らしいと思った。ブラボー、と賞賛を送りたかった。
かつて戦場視察のときにみた、シールドを見事に使った動きをたどたどしいとはいえ、このディガーナーの操縦者、エディは成功させたのだ。
エディはその後も動きも前の操縦者に倣い、アームを繰り出す。
社長は操縦席で、体勢を立て直すための操作を行った。普通の機構なら間に合うことなくパーツを破壊されるが、マシュヌビアは普通の機構ではない。鉄の塊であることを忘れさせるほどの俊敏で美しい動きをしながら体勢を立て直し、ディガーナーのアームをバックステップで回避した。そのバックステップの動きも、ディガーナーでは到底敵いそうに無い。

「いいぞ、中々悪くない動きだ!だが元の操縦者なら装甲にかすらせるぐらいはできた!」

着地からの攻撃はすぐさま行われ、再びディガーナーに防御を余儀なくさせる。
恐ろしいほどの性能差に圧倒されながらもエディは、どう文句をつけたものかと悩んでいた。ただ、同時に好奇心から、どうやって操縦席から見ているのだろうと思ったエディは、アームを受け止め、マシュヌビアの装甲を見た。
すぐさま振り払われたが、エディは装甲の光沢とは別の光があるのに気づく。

「蒸気機構は素晴らしいだろう!こんな動きまで可能にしてくれるのだから!」

その輝きは鏡だった。仕掛けが分かったエディは、すぐさま向かってくるマシュヌビアに向かって銃を向け、撃つ。異常なスピードで動くマシュヌビアに、揺れる蒸気機構の上で精度の低い銃から発射される弾は、エディの狙い通りの位置に命中する。
エディの思ったとおり、マシュヌビアは焦ったように脚部で急ブレーキをかけてから後ろに大きく跳ぶ。ディガーナーはそれに追いついて、全力でアームを突き出した。しかし、阻まれる。エディは、自分の予想が外れていたのかと思った。だが、予想は別に間違っていなかった。
アームを掴まれ、壁のほうへ投げ出される。ぶつかった時の衝撃がエディを襲う。

「中々楽しませてくれる。この欠点は私も苦労させられたよ」

社長のバカさがこのときエディを救った。社長はマシュヌビアの強さを見せたくて見せたくて仕方が無かったのだ。

「その通り、操縦者の安全を考え、内部に入れるには、内部から見れるようにしなくてはならない。だから鏡の反射を利用してゴーグルから覗くような仕掛けを作った。だが壊されたときは一々修理する必要がある」

痛さで咳き込むエディに構わず、説明を続ける。
マシュヌビアの仕掛けは、潜望鏡と全く同じものだった。

「しかしマシュヌビアのスコープが破壊されるのは本当に稀だ、と私は思った。だから単純な発想で行くことにした」

エディは、鏡の光が先ほどまでは無かった位置から出ていることに気づく。

「本当に単純だ。ただ数を増やした。蒸気機構で見る場所の切り替えを行えるんだ。ちなみに後ろも見れる」

銃の残弾はもう2発しかなかった。あといくつ残っているのだろう、とエディは思った。

「そこまで気づいた上、眼を潰しただけでも本当に素晴らしいと思う。手放しで賞賛できるよ」

社長の演説は止まることなく続く。

「このマシュヌビアは完璧だ。神がもたらした蒸気機構の最終系と呼んでもいい」

内部から響く声が高揚していくのを、エディは感じた。

「これ以上の進化は無い、と私は思う。それほどの出来なのだ!」

エディは分かった。こいつは、『蒸気機構で倒すことは不可能だ』と。同時に、どう文句をつければいいか予想がついた。問題は、文句のつけどころが分からないということだった。

「君のような人間に、神の力を存分に見せ付けられてうれしいよ!」

マシュヌビアが向かってくる。ここでエディは賭けに出ることにした。しかし、まずはマシュヌビアの放つ回し蹴りに対応するほうが先だった。ディガーナーをわずかにかがませ、自分も操縦席でかがむ。自分のすぐ上を過ぎるレッグに肝を冷やしたが、ひるまずタックルをかける。それをマシュヌビアはいとも簡単にかわし、次の攻撃を仕掛けてくる。

「どうした!?当たらないぞ!」

マシュヌビアの攻撃は先ほどからかわされはされているものの、当たっているものは全て、決して装甲が弱くないはずのカスタムされたディガーナーの表面を着実に削っていた。中にはもう内部が見えている部分も見られ、ディガーナーで攻撃を一撃も当てられなければ、エディはジリ貧で負けてしまうのだ。
だが、エディもただやられているわけではなかった。先ほどから考えていた賭けに出れるポジションにつけたのだ。次の攻撃がなんであるか確認している暇は無い。アームを操縦席へ向けて繰り出してくると予想するしかなかった。
マシュヌビアは駆け、アームを繰り出してくる。この予想が、一つ目の賭けが合えばあとはエディの技量と、社長の技量の勝負である。それは、蒸気機構の操作における話だけではなかった。
シールドで受け流すかの様な動きをするための操作と、スコープを狙って銃を撃つ動作を連続で行う。急にゆがんだ視界と崩れたバランスで、マシュヌビアは当然転倒する。社長の部屋にあったデスクが、盛大に破壊される。

「机も蒸気機構で作っといたほうが良かったんじゃないか?」

別に皮肉や冗談で言ったわけではない。二つ目の賭けがあってるかどうかの確認である。

「いい案だと言いたいが、実はもう蒸気機構なんだ」

デスクは蒸気機構で動かせるものだったが、デザインを考慮して木で覆われていた。内部は鋼鉄製であった。そんなものに思いっきりぶち当たって無傷なわけが無く、立ち上がったマシュヌビアの装甲には大きな穴と亀裂の中間のようなものが出来ていた。

「たしかに、バランスを崩しているときに前が見えなくなると技量の低いものは転倒してしまうな。私の技量不足だろう。あ、今マシュヌビアはどうなっている?」

こちらに向き直ってマシュヌビアの中の社長は言った。まだ見えているのだろう。銃弾は残り一発となった。

「左のわき腹に大きな穴が開いてるぜ。完璧じゃなかったのか?」
「装甲が壊れたのは構造学と私の技量の問題だ。蒸気機構が悪いわけではない」

社長は、ディガーナーの操縦者が左のわき腹にある穴を狙ってくるだろうと踏んだ。
性能を見れば、マシュヌビアは全蒸気機構の中で最強である。操縦者の能力も最強であるなら、一対一の戦いで負けることなどは絶対にありえない、現在の技術の最高傑作だった。
しかし、目の前のディガーナーが格下であるとはいえ、不覚を取れば負けるようなこともあるのだな、と社長は気を引き締める。このディガーナーの操縦者は、性能差を埋めるだけの何かを持っていると認めざるをえなかった。
左側を意識したような動きをするディガーナーを警戒しながら、攻撃をあしらっていく。だが、その警戒がマシュヌビアを部屋の隅へ押しやっていってしまう。
この瞬間こそ、お互いの技量が試される瞬間だった。エディは、三つ目賭けにでる。
社長は分かっていた、今このときこそマシュヌビアの視界がもう一度潰されるときだと。エディはそうした。操作、タイムラグ、様々な要素で視界の回復が間に合わないことは予想できていた。
だから、己の勘を頼りに左わき腹に繰り出されているであろうアームを受け止めようとする。ずしん、と何かを受け止めた振動を感じた社長は、マシュヌビアの全力を使った蹴りを、ディガーナーがいると思った位置に放つ。それと同時に、視界を戻そうと、仕掛けを動かした。
数瞬の後戻った視界には、マシュヌビアの脚部で胴が裂け、破壊されたディガーナーと、突き出されたアームの上を駆けるエディの姿が見えた。突き出されたアームの先は、先ほど開いた亀裂。エディは最後の賭けをするために、マシュヌビアの内部に飛び込んだ。
社長のこのときの唯一のミスは、エディが自分と戦うためにここに来たのだろう、という普段のバカな考えのせいであった。しかしエディは文句をつけに来たのだ。戦いに来たわけでも、社長をどうこうしようというわけでもなかった。
中に飛び込んだエディは、内部の熱量に一瞬ひるんだが、すぐに、父に良い、と単純な言葉でほめられたその眼で、周りを見渡す。見れば、人のミスによるゆがみなんて彼の眼には大量に見えた。だがそんな重箱の隅を手に持ったもので突いても、何の意味も無い。もっと致命的な、ミスですらない、蒸気機構の重大な欠点を見つけなければならなかった。
これが最後の賭けだった。蒸気機構は神の万能の体現であるかないか。そう信じ込んでいる社長の目を覚まさせるような文句、そのつけどころは二回ほど周りを見渡したときに見つかった。
それは普通の機構を見たときでは絶対に分からなかっただろうものであった。シンプルでありながら蒸気機構の最終系であるマシュヌビアの構造を、今のエディが見たからこそ分かったのだ。
熱に構わず、その場所へ進み、手に持ったパイプをその部分が正常に機能しなくなるように、思いっきり刺し込んだ。

「これがっ、俺の文句だ!」

その声は同じく内部にいた社長にも聞こえていた。
目的を達したエディは亀裂から外へ飛び出た。起動中は常に動いているべき部分ですら停止している。もうそれを見ただけで満足し、拳を突き出したディガーナーと、それを受け止めつつ蹴りを命中させたままの体勢のマシュヌビアを尻目に、部屋の出口へと向かった。
操縦席の社長は困惑していた。少年の声が最後に聞こえてから、マシュヌビアが動かず、その上内部の熱が異常に上がってきていたのだ。

「何かミスがあったのか!やはり神の力を扱いきった、というのは傲慢だったかな」

流石にまずいと思った社長は、操縦席から飛び出して地面に着地した。
何があったのか、と亀裂のほうを見ると、動力が爆発する光で一瞬だけエディのやったことが見えた。本当にたった一瞬だったが、マシュヌビアの設計者である彼は理解したのだ。彼が何をしたのか、何を言ったのか。刺さっていたのがへし折られたディガーナーの操縦ハンドルであったことまで分かるぐらい、その光景は頭に焼きついた。だがその直後、マシュヌビアの爆風が彼を襲った。

「え、エディ!」

爆発音とともに扉が開き、エミリーの前にエディは現れた。

「おう」
「社長、どうなった?」

間髪入れず、ディガーナーの操縦者が聞いてくる。彼は先ほどの爆音で、ディガーナーは帰ってこないだろうと思った。

「知るか、俺は帰る。親父の葬儀をやらなきゃならん」

よろけながら歩くエディに、エミリーは声をかけた。

「送ってくよ。いいでしょ?」

エディの表情を見て、あの蒸気バカに一泡吹かせたのだ、と思ったエミリーは、この場にいてもしょうがない、せめてそのバカに一泡吹かせたバカを送っていこう、と考えた。奥の部屋から聞こえてくる激しい金属音を聞いている間、ずっとどうしようかと迷っていた時に思いついた答えだった。

「あぁ、助かるぜ」
「それぐらいしかできないけどね」

ハイク-タイプSに乗り込み、後ろにエディを乗せる。

「今度は飛ばさないでくれよ、疲れてるんだ」
「はいはい」

二人の姿をみてディガーナーの操縦者は、自分と社長の出会いを思い出した。すぐに今は些末なことか、と振り払い、社長を見に行くことにした。しかし彼の中には、あの人なら無事だろうな、という確信があった。別に根拠などないが、そう思った。

「そういえばあんた、どうやってここに乗り込んだの?」
「あ?街の外のほうに塔が立ってるだろ?あれで飛んできたんだ」
「え!?と、飛んできた!?あんたって、ホントにバカじゃ……」

二人は進み出した。















結論から示そう。社長は生きていた。無傷で済んだわけではないが、派手な爆発を食らった割にはすぐ回復した。
いくらなんでも早すぎるんじゃないか、と聞かれたときには、

「気になって気になって仕方ないことがあったんだ。仕方ない」

と答えていた。質問した側は、心底意味不明そうな表情をしていたが、まぁそうなのかな、などと適当に流した。
その気になっていたこととは、『エディの文句』についてだった。
社長主導で進められた実験で、蒸気機構の致命的な欠陥が明らかになった。蒸気機構の内部構造は、元をたどれば西の海からたどりついたカラクリ師が伝えたものだ。しかしそのカラクリ師がつくるカラクリは、木材などで作られ、手動で動かすものだった。
普通に動かすだけであるならば全く問題は無い。しかし、その構造を究極と呼べるまで突き詰めると、材料の差、動力の違いが致命的なミスマッチを生んでしまう。
カラクリのことなど知らぬ彼らには原因が分からなかったが、その実験によって蒸気機構にも、どうやろうと直せない致命的な弱点が存在することが分かってしまった。
つまり、蒸気機構は神のもたらした万能の技術ではなかったのだ。このことについて、社長はこう語る。

「神が我々の父であるとするならば、その父から貰ったものでいつまでも満足してはならない。きっと神は我々に自ら歩くことを望んでいるのだろう」

結局、蒸気機構は神がもたらした技術である、と彼の中では落ち着いたらしい。
だが、蒸気機構以外の機構に寛容になるどころか、積極的に取り入れるようになったのは大きな変化だった。立場もあるので、少し苦労しているようだが。
馬鹿げたパレードは数日に渡って何度も行われる予定だったが、すぐに駆けつけた部下が聞いた、中止しろ、という命令で止めることになった。
些事であるが、下で小競り合っていた大煙突と、それに反抗する人々の争いは、大煙突側の勝利だった。最上階で待っていた三人の男たちは、全滅を伝えられるまでとりあえず待っていたらしい。

「ふーん……」

エディが暇つぶしに読んでいた新聞には、そのようなことが書かれていた。ちなみに、拾い物である。
父の葬儀はずいぶん前に終わり、工房は他の人に経営の仕方を聞きながらどうにか食っていけるぐらいには安定させられているようだ。間接的に殺してしまった男は、傭兵である、という理由で簡単な手続きで終了した。
社長がマシュヌビアの最後を見たのは、エディにとって最後の奇跡だった。しかし、あの時の少年ならどうでもいいと撥ねつけるようなものである。そして、どうにか先が見える程度の今の少年にとっても、友人が無事に過ごせていけるな、という感想を持つ程度のものだ。
エディの傍らには、仕事の合間に組みなおしている射出塔があった。材料は流用できるので、案外早く元に戻りそうに思われる。
しかしそれは、本当の意味での元の射出塔ではないのだ。彼とともに育ったあの鋼鉄の塔は失われた。そんなことは、曲げられたあの瞬間から理解していた。

「おーい」

ただ別に、この出来事が彼に何も残さなかったわけではなかった。父親は死んで、空は未だ黄ばんだ色をしているが、失墜していく中で得るものもあったのだ。

「待ちくたびれたぞ」
「うっさい。空ばっか気にしてないで、こいつのことも見てやってよ」

エミリーは、背負っていたバッグから彼女が前に話していた、今は両親の形見となってしまった機関を取り出した。二人で改良案を出し合っては、エミリーが持ち帰ってその案を試し、エディがチェックとテストをする。射出塔が完成すれば、推進器にしてフライトテストにも使うつもりだ。
大煙突にその技術を買われたエミリーは、結局そのまま大煙突に雇われた。エディの知り合いと言うことで、社長のバカに振り回されることもあるが、無理なくやっていっているという。

「……この前、ここが原因でおかしくならなかったか?」
「いや、でもこれ外すとこっちが……」

少年は、自棄になって文字通り飛び出したときのことを思うと、我ながらバカなことをしたな、と少し恥ずかしくなった。ただ、あのまま無抵抗で射出塔を破壊されてもいい事には何もならなかっただろうとも考えている。
彼には、あの出来事の後にできた友人であるエミリーは、自分の選択が間違っていなかったことの証明であると感じられた。だからエディは、同じく自分の出来事の後に出来た、作り始めた新しい鋼鉄の塔に、彼女との関係が良きものでありますように、と願いをかけた。



<了>













あとがき




ちくわ大明神

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No title

スチームパンクっぽいスチームパンク! まさにこれがスチームパンクですよええ!

それにしても三日でここまで書けるってすごいと思う。リハビリってなんだ!

というわけで楽しめました。ありがとう星さん!



馬鹿社長がすごく好みのキャラだった。

No title

やばい 思ってた以上に面白い

よく長い文とか面倒になってパスしちゃうのに一気に最後まで読んじゃったもの 面白いわこれ

社長とか部下の人とか、もやしが好きそうなキャラだなぁと思いながら読んでた
やっぱ好きだった

No title

断腸の思いでまじめなこと言うけど、この小説は二つの音楽のイメージが元。

一つは「終末のミュートロギア」。流行れとは言わないけどもっと評価されろ。
文体が作業中のBGMで変化するからいっそのこと一つだけループする、という
判断が元で250ループすることに。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm16040310

もう一つは、特定の音楽というわけではなく、SKA系音楽。
上の曲に不足している、煙で汚れたレンガの街並み分を補うためにイメージ。
一例が下の曲
http://www.youtube.com/watch?v=yxYRJEeN6Gg&feature=relmfu
プロフィール

しなび。

Author:しなび。
なんていうか、もうどうにでもなーれ☆

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