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なにかを。

書いた。

 ある秋の日の昼下がり、私はいつもの時間、いつもの公園へ、いつものように、散歩に出かけました。その日は秋晴れと呼ぶにふさわしく、雲ひとつない空で、それはもう清々しい気分で出かけることとなりました。
 いつもの公園は、すでに秋の風情を映し出す風景に。いつもの散歩道に茂る木々は、いつの間にか紅く染まっていて。蒸し暑い気候も、いつのまにやら少し肌寒い空気に変わり。以前はやかましいほどに鳴いていた蝉も、いなくなってしまうと、それはそれですこしばかり寂しいもの。その代わり、耳を澄ませば、鈴虫の鳴き声がどこからか聞こえてきて。今年もまた、秋になったのだ、と思ってついつい、ほう、とため息を吐いたのです。季節が変わっていくさまを見るのは、何度見ても飽きないものです。
 さて、そうしていつもの散歩道を歩いていると、これまたいつものように、休憩場所へとたどり着きました。それは、公園の中心、大きな大きな樹の生えている、ちょっとした広場です。そこには、大木の正面となるところにベンチがあって、いつもそこで休んでいるのです。今日も、そのベンチにゆっくりと腰を下ろします。そうして、少しの間、大木を見上げてぼうっとするのでした。
 と、ふと大木を見たのですが、今日はいつもとは違うものが目に入りました。その大木の根元に、穴のようなものが開いていたのです。一メートルほどの、あまり大きくはない穴。そんなところに穴は開いていなかったはずなのに。私は首をかしげました。そして、一度違いを見つけてしまうと、それは気になって仕方がなくなってしまいました。私は、その穴をじっと眺めます。
 と、しばらくすると、なにやらもう一つ、奇妙なものが目に映りました。それは白い毛皮を着た小動物で、長い耳を持っています。そう、それはウサギと呼ばれる生き物です。けれど、そのウサギは奇妙なことに、人間のように二足で歩き、黒い紳士服とシルクハット、それからお洒落な片眼鏡でめかし込んでいたのです。私の知る普通のウサギは、そのようにめかし込むことはありません。一体、どんなウサギなのでしょうか。そのウサギは何やら急いでいるようで、「ああ、急がねば、急がねば!」と叫びながらとてとてと走っていました。
 と、そんなことを思っている間に、そのウサギはためらう素振りも見せずに、先ほどの穴へと飛び込んでしまいました。そうして私は、なにがなにやらわからぬまま、公園に一人残されてしまいました。そして、一人になってしまうと、途端に興味がむくむくと湧いて来ました。あのウサギはどこへ行ったのだろう、女王様とは誰なのだろう、そもそもあの穴はどこへ繋がっているのだろう。考えだすと止まらず、気がついたときには、すでに穴を覗き込んでいました。穴の中は暗く、先を見通すことは叶いません。どうしたものか、と考えましたが、奇妙なものを見つけて気分が高揚していたのでしょうか、考えるのは後でいいや、とその穴の中に飛び込んでいたのです。
 飛び込んでみると、一気に下に向かって落ちて行く感覚に掴まれました。けれど、しばらくすると、その感覚が小さく弱くなっていきます。どうやら、底のほうから風が吹き上げていて、私の身体を、上へ上へと押し上げているようなのです。なんとも不思議な心地で、その穴を降りていきます。そうやって暗闇の中に目が慣れてくる頃、ようやく地面へと足がつきました。その頃には、すでに落ちている感覚も殆ど無く、水の中をゆったりと降りているような心地なのでした。
 穴の底はぼうと光っていて、足元も鮮明に見ることが出来ました。どうやら、落ちている石が、薄い光を発しているようなのです。そうしてあたりを見渡してみると、横穴が深く続いていました。横穴の先は曲がっていて、曲がりくねっていることがよくわかりました。天然の迷路であるのかもしれません。私は迷わず、その横穴へと足を進めました。
 いくつもの曲がり角を抜けて、時に上へ、時に下へ、洞窟を進んでいくと、やがて石の光とは違う、明るい光が見えて来ました。どうやら、この迷路の出口のようです。久しぶりの外の眩しさに目を細めつつ、私は外へと身を出しました。
 すると、何やら足元が地面ではなくなったようでした。あたりも外ではなく、壁の内側になっています。どうやら、ここはどこかの家の中のようです。足元に敷かれた絨毯はふかふかしていて高級そうです。頭上のシャンデリアも、いろんな装飾が施されていて、これもたくさんのお金がかかっていそうです。どうやらこの家の主は、装飾にたくさんお金をかける人のようです。部屋をよく見渡すと、広間のようになっていて、そこにはたくさんの扉がありますが、これもまた、真鍮などで装飾を施された豪華な扉となっていました。
 さて、広間の真ん中にある机を通りすぎて、扉を開けようとしてみました。ですが、鍵がかかっているのか、どうにも開きません。たくさんの扉をすべて確かめてみましたが、やはり一つとして開くものはありませんでした。
 そこで、今度は机の上を見てみました。すると、机の上には鍵が置かれていました。やはりそれも、他の家具と同じく、ふんだんに装飾が施されています。
 私はその鍵を取りました。そうして、次は瓶を探さねば、と思ったところで、後ろから声をかけられたのです。
「貴女、そこの貴女。どこからここへ入ったのですか?」
 振り返ると、先ほどのウサギが立っていました。走ったせいなのか、吹き出す汗をハンカチで拭っています。
「公演の、大きな木の根元から。あなたを追いかけてきたのよ」
 私がそう答えると、ウサギはやはりかといった表情でーー今更ながら、ウサギの表情がわかるというのも奇妙な話ですがーー言葉を返してきました。
「ふむ、ふむ。なるほど。またしても、この国に来る人がいようとは」そう言って、しかし、と言葉を続けます。「そう、しかし貴女はこの先へは行くことはないのです」
「まあ、それはなぜかしら?」と、私は問いかけました。ウサギはすっと目を細めて、答えます。
「貴女が問う必要も、そして私が答える必要もありません。貴女はすでにわかっていらっしゃる。だからこそ、先ほど貴女は瓶を探したのでしょう? 不思議な薬の入った瓶を」
 その答えを聞いて、私は少しがっかりした気持ちになってしまいました。たしかに、ウサギの言うとおり、問わずともすでにわかっていることです。それは、私にとって寂しいことでした。
「では、私はどうすればいいの?」問うと、ウサギは答えます。
「それもわかっていらっしゃることです。貴女はお帰りになられるのです。元いた場所へと、ね」
 そう言うと、ウサギはひとつの扉の前に立ちました。そして、懐から鍵を取り出して、差し込み、回します。扉は開きました。先には、暗い通路が続いていました。
「さあ、お帰りくださいな。ここに来るべきは、貴女ではない。それはすでに終わっているのです」
 少し強くウサギを睨んでみたけれど、ウサギはちっとも意に介した風を見せません。私は、ため息を吐いて、その通路へと足を向けました。私は、きっとここに来るべき人間ではなかったのでしょう。そのことに少し失望しながら、けれど納得もしながら、扉をくぐりました。
 くぐるときに、ウサギが声をかけてきました。
「さようなら。もしも貴女がアリスのときであったならば、また違っていたでしょうに」
 その言葉を背に、私はひたすらに歩みました。先へ。先へ。
 そうして、暗闇がしばらくつづいて、やがてそれが晴れてくる頃ーー

 ーー私は声をかけられた気がして、目を覚ましました。
 ここは公園のベンチ。私はそこに座って、正面の大木を眺めています。その大木の根元には、人の通れるような穴はありませんでした。
「もう、やっと目を覚ましたのね。こんなところで寝ていたら、風邪を引いてしまうわ」
 ふと、近くから声がかけられました。それは若い女性の声です。見上げると、たしかに若い女性が近くに立っていました。少し呆れた表情をしています。それはそうでしょう。なぜならば。
「散歩に出るのはいいけれど、秋になったってことを忘れないでね。夏と違って、あっという間に冷えちゃうんだから」
「わかってるわ。つい、少しばかり、うとうとしてしまっただけよ」
 そう言って、私は杖をついてベンチから立ち上がります。その様子が危なっかしく映ったのか、少しはらはらした目で見ていましたが、さすがにそこまで老いぼれてはいません。足腰も、少し曲がってしまった程度で、問題はないのです。
「そういえば、あの子はどこに行ったのかしら? また、近くで遊んでいるの?」
「ええ。アリスなら、あの木の近くで遊んでいたわ。ああ、ほら。噂をすれば」
 目を向けると、小さな女の子は、どうやらこちらへ駆け寄ってくるところでした。土をいじっていたのか、少し手が汚れています。「誰かさんに似て、やんちゃだこと」私は少しだけ、笑ってしまいました。駆け寄ってきた女の子は、私に向かって言いました。
「ねえ、ねえ! さっきあそこに、ウサギさんがいたのよ! あたし、はじめて見ちゃった! ウサギって、ほんとうにお耳が長いのね! 次に見つけたら、ぜったいにつかまえてやるわ!」
 息を切らして、嬉しそうにはしゃいでいます。母親は、ウサギを捕まえちゃかわいそうよ、と窘めています。
「そうかい。それはよかったね。また、この公園に来たときに、会えるといいねえ。アリス」
「ええ、ほんとうに! またつれてきてね、おばあちゃん!」
 そう言って、私の孫はまた嬉しそうに笑いました。私も、つられて少しだけ、笑ってしまいました。
 そう、次に来るときは、きっとウサギに会って。そして、あの不思議な国へと足を踏み入れるのでしょう。彼女は、未だ少女であるのですから。






後半適当、出来酷い、読みにくいの三点セット。

プロフィール

しなび。

Author:しなび。
なんていうか、もうどうにでもなーれ☆

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面白そうだから入れてみた。今日のカードはこれっ!
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