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囃子の音は海を駆ける①:聞きなれない喧騒曲

覚えているかな、かの星だよ。覚えていない方ははじめまして、かの星です。新しい関係を築き直しましょう。
いやぁ……テスト期間は強敵でしたね。








 立ったままうなだれる手を拘束されたマークとそれを愉快そうににこにこしながら見るアドラス、そして興味無さげに二人を見る特別顧問。音は無いが、静寂と表現されるような雰囲気は流れていない。ドアがノックされアドラスが許可をすると、三人がいる部屋へリシアが書類を持って入ってきた。そしてアドラスとマークは待ちわびたものがやっときた時の顔をした。片方は喜びが、もう片方は不安と恐怖が心を支配してるような顔であった。

「指定された書類を持ってきました」
「はいはい。じゃあもう元の仕事に戻っていいよ」
「分かりました」

 リシアはそう言われると失礼しますと無機質な挨拶をしてから部屋から出て行く。アドラスはうきうきしたような表情で書類を確認し、希望を求めるような哀れな表情をしたマークはその様子を見て非常にもどかしい思いをしていた。

「これはね、君を調査した結果なんだよ」

その様子をアドラスは分かっているのか、勿体つけるような感じの言い方で書類の説明をする。特別顧問の表情は依然として興味がなさそうな様子のものであり、時折暇そうに窓の外を眺めたりしていた。

「普段の行動とか、交友関係とか、どういう人生を歩いてきたとか、とにかくそんな感じのことが書いてある。それでね」

一度喋るのをやめ、アドラスはマークに背を向けた。マークはもう気が気でなく、早く自分の処遇について聞きたかったが、質問するだけの気力が残っていなかった。だからアドラスが言うのを待っているのだが、それを分かっているアドラスは楽しそうにマークを不必要に、執拗に焦らし続ける。

「立ち話もなんだし、座ったらどうかな?」
「……………………はい」

二人は応対用のソファーに、お互い向き合う形で座った。沈黙で拒否するつもりのマークだったが、座らなければ話を続けないぞという意思がアドラスから感じられたため、おとなしく座ることにする。

「それで、なんだったけ?ねぇ、マーク君」

マークがそんなことを知るはずが無く、黙っているしかない。更に言えば、アドラスは覚えているのにとぼけた真似をしているだけだ。

「うぇっへっへっへっへ」

それから少し気味の悪い、うわついてうれしそうな笑い声を上げるアドラスが言った。特別顧問は既に完全に興味を失っており、暇そうに部屋に置いてあった何らかの書類を適当に眺めている。

「思い出したよ!」

無駄に話を伸ばすアドラスに、いつものマークだったら相手が偉い人間であろうと年上の人間であろうと関係なく、珍しくも怒っていたことだろう。しかし彼は今絶望のふちに立たされており、怒るだけの余裕などあるはずもない。ただ自らの首を撥ね飛ばす斧が振るわれるのを待つだけだ。

「えーっとね、これだけの情報を数日で集めてくれる情報局の局員って優秀だと思わない?」
「…………知りませんよ」
「えっへっへっへっへ。つっけんどんだなぁ!くくっ、けけけけけっ……!」

アドラスが異常なまでに愉快そうに笑って話を進めないのでマークは苛立っているが、特に何もしない。

「ふふ……、ふっふっふ……。じゃ、じゃあ質問に移ろうか」

 少し雰囲気が硬いものに変わったので、マークはうなずいた。

「嘘ついてもあとで秩素で確認するから嘘はやめたほうがいいよ。それに、内には拷問部があるから」

それを聞き、マークは少し恐ろしさで体を小さく震わせる。その後アドラスはなんてこと無いようにすらすらと言った。

「嘘だけどね。じゃあ第一問!君が非常に親しくしているのは、君がいた孤児院の人達である!」
「……はい」

少し迷ったが、正直に答えた。どうせ嘘をついても意味は無いのだ。

「第二問!君の論文の内容は他の人に話していない!」
「はい」

これには迷わず答える。嘘でないという自信があったし、内容を知っている人間は自分と同じ運命を辿る可能性があるからだ。その様子になぜか吹き出して笑ったアドラスは、続けて質問をする。

「第三問!君には生まれてこの方恋人が出来たことがない!」
「えっ。あ、はい」
「寂しい人生送ってるねぇ!」
「…………」

全く関係なさそうな質問に少し戸惑ったが、一応人間関係のことだったのでそういう質問もあるのだろうかと思って素直に答える。ただし、回答に寄せられた感想については余計なお世話としか言いようがない。

「第四問!君の趣味は、読書と休息である!」
「……そうですね」
「老人みたいだ!もっと動いたらどうだい!」
「……そうですね」
「うぐっ、ふふふ……」

笑いを必死にこらえるかのようなうめき方をするアドラスにマークは不信感を募らせる。いや、アドラスへの不信感は既に最高に達している。正確にはこの質問に対する不信感を募らせた。質問はもはや世間話と変わらないほどであり、意味があるかどうかを考えると非常に怪しい。

「だ、第五問!!!うぐぇっ、き、君の好きなた、たべも、食べ物ぐっ!えっへっへっへっへっへ!!」

もう耐え切れないといった様子でアドラスは吹き出し、それから大笑いしはじめた。

「あは、あっはっはっはっは!こ、こりゃ傑作だ!」

足をばたばたさせながら腹を抱え、ソファーから飛び出しそうな勢いで笑い、そうして笑い疲れてから息を切らせてうずくまったあと、また笑い出す。そして笑いながらアドラスは、やるせなさに襲われているマークに告げた。

「うげっへっへっへ!お、お察しのと、通り!この質問、あはははははは!ぜ、ぜんぜっ、全然関係ないっ!ぎゃはははははは!」
「いい加減にしたまえッ!!」
「うひゃい!」

突如窓のほうからあがった怒号に、アドラスは笑った顔のまま驚いてソファから少し浮いた。その声を出した特別顧問は特に怒った表情はしておらず硬く口を結んだ硬い表情のままで、雰囲気も特に怒り心頭といった様子ではない。一切語気や表情を変えずに特別顧問は言った。

「貴殿にはこのほかにも仕事があるだろう。さっさと終わらせろ」
「はぁい……」

不機嫌そうに返事をし、ため息をついてから、アドラスのまとう雰囲気が非常にけだるそうなものになる。恐らくこっちが本来の仕事の態度なのだろうとマークは思った。そしてやっと話が進むと思い、特別顧問に少し感謝をする。しかし結局はナイフをじわじわと喉に沈み込まされるような状況から一気に一突きされるようなものになっただけなので、心の底から感謝は出来なかった。

「今まで散々引き伸ばしてきたわけだけど、君に質問することはあまりないんだ。精々確認することがいくつかあるだけ」

つまらなそうにため息をつき、先ほどとはうって変わった抑揚の少ない声で話し出す。

「えー、君は孤児であり、孤児院からは既に自立。一般的に言う一人暮らしを送っているね?」
「はい、そうです」
「あーつまらん」

さっさと終わって欲しいといったように、次にいこう、と言ってアドラスは続ける。マークにしてみれば人が不安で不安で仕方ないときに、それを見て目の前で愉快そうにされることの方が相当つまらない。それどころか不快である。

「更に言えば、人間関係がそこまで濃厚なわけではない」
「……まぁ、そうですね」
「はぁ……」

退屈そうなため息を吐く。ただ、やっと終わってくれた、という意味も含んだように思われるため息であった。その証拠に、顔が怒鳴られる前のものに戻ったのだ。非常な嫌な予感がマークを襲う。愉快そうな顔でアドラスは立ち、手で向きを示す動作をする。

「実は君に会わせたい人物がいるんだ」
「えっ……?だ、誰ですか?」
「ここじゃあ言いたくないなぁ。特別顧問どのはどうしますかぁ?」

特別顧問は依然として表情を変えないままでこちらを向いた。

「貴殿の仕事の監督をしてやろう」
「うはは、こりゃ心外だ。私にはいたって真面目に仕事しているという自負があるんですがね」

どの口で言うのだとマークは思った。特別顧問もそう思っているが、マークと違って表情には出さない。

「というわけで、さっさと行こうか。別の部屋で待っててもらってるんだ!」

どうにも言い方が孤児院でいたずらをしている子供のものと似ているので、マークは不安をより募らせる。しかし話が終わるまで自分の処遇についてを聞くことは出来ないだろうと思って、素直に付き合うことにし、立ち上がる。答えが肯であると思ったアドラスはドアの方に歩き、ドアを開けた。

「マーク君は手が不自由だし、僕が開けている間に通りなよ!」
「…………」

マークは無言で通る。無駄に不安をあおる言い方をするアドラスは廊下に出たのを見た後、特別顧問にも言った。

「ささ、特別顧問どのもどうぞどうぞ!」
「では遠慮なく」

特別顧問も通ったのを確認し、アドラスが廊下に出てからドアを閉めて鍵をかける。その後、こっちだ、と言ってからマークの前を歩いて案内を始めた。無理をしたマークの筋肉が、歩いたために痛みを発し、それにマークは顔を歪める。
 歩いている間にも当然の様にアドラスは口を動かす。

「しかし調査書の内容が本当で、君も嘘をついていないとしたら、マーク君って寂しい人生送ってるよね」

無言のままのマークに、構わず話を続ける。

「話してて分かるけど、つまんない。優しいし、頭は良いみたいだけどさー。そうでしょう?特別顧問どの」

先ほどまで散々人のことを笑っておいて何というセリフだ、と思ったが、マークには自分がそこまで面白みのある人間でないという自覚があったので何も言い出せない。マークの少し後ろを歩く特別顧問は話を振られたので答える。

「ユニークかどうかは別にして、そうであるな。マークヘリオ・アーデルバーグ、貴殿は実に優秀であり、良心のある人間だ。我輩はそうおもうぞ」
「はぁ、ありがとうございます……」
「まぁ今回はそれがあだになっちゃったけどねー!」

あまり印象のよく無い相手から褒められ、マークは戸惑いながら言う。情報局の人間に対する印象はアドラスのせいで全て悪いものになってしまっており、それ以外の人物に対してどうしても先入観などが入ってしまうのだ。それを考えるとこの特別顧問と呼ばれる人物は結構立派な人間なのだろうと思う。先ほどアドラス達といた部屋に、マークを連れてきたリシアもマークが目隠しをしていたり体に痛みを感じているのを気遣いながら誘導していたように思われる。特別顧問の賛辞をめちゃくちゃにする様な発言をするアドラスが異端なのだ。そんな人物がなぜ局長なのか理解に苦しんだが、マークにとってはどうでもいいことである。

「いや、でも友達少なくて助かったよ!論文の内容を知ってたらちょっと目も当てられないことになっちゃうんだけど、そういうことするのも楽じゃないんだ!事後処理とかね!」

 アドラスが喋っている間にとある部屋の前に到着した。ドアの前に立って、アドラスはノックをする。

「もしもぉーし?入ってもいいですかぁー?」

人の神経を全力で逆撫でし続けるような声を出し、中にいるであろう人物に入室の確認を取った。しかし返事は無い。そんな言い方をすれば無視されるのも当然だろう、そうマークは思う。

「あれれぇぇ?返事が無いなぁぁぁぁ?」

そのまま無駄に時間を消費させるような発言をしながら、無駄にリズミカルに、無駄なノックを続ける。無意味に愉快そうに見えるその顔とその一連の動きは、不快というより不気味といったほうが正しい。

「でぇぇもぉぉ?返事が無いのはとーぜんかぁ!」

アドラスはドアに手をかける。顔は異常なまでに愉快そうであり、気味が悪い。

「だって」

その声で少しドアが開かれる。誰かが倒れているのが見えた。

「中にいる人はぁー?」

また少しドアがゆっくりと開かれていく。そこにはマークの知る人物がいた。倒れている人物は、マークがよく行く図書館の館長であった。

「死んじゃってるんですから!」

その言葉で館長がどのような状態にあるかを聞いた。しかしそれを理解するまでには少し時間がかかり、理解できるまでマークは目を点にしていた。そして理解したマークが息を詰まらせながら喋る。

「かっ……館長?……な、なんで館長がここに!?あ、あ。な、死んで……」

何から聞けばいいのか全く分からず上手く口を回せていなかった。その様子を見てアドラスは腹を抱えて大笑いしている。特別顧問の表情は変わらないが、目には救いようがない奴だ、という意思がアドラスに向けてこめられている。どうにか気持ちを落ち着けようと冷素霊紋を使おうとするが、冷素はなぜか周囲に散ってしまった。アドラスはわざとらしく涼しいなぁ、と笑いながら言う。それが余計にマークのパニックを加速させ、マークは全く判断が出来ないほどの状態に陥る。

「れ、使えなぅ……えっ?死……どうして……?」

アドラスは殺す気か、と大笑いしながらマークの目の前の床の上に倒れこみそうな体勢になっているが、それはマークの意識の外だ。その様子を見かね、特別顧問がマークに声をかける。

「マークヘリオ・アーデルバーグ。手を、手錠を見たまえ」
「手……?あ、手錠……」

マークは何をしていいか分からない状態で言われたため、言われたとおり素直に手錠を見た。初めはただ呆然と見ていたため意図がつかめなかったが、注視するとあることに気がついた。

「集霊植物……?」

 集霊植物とは、性質子を集め、内部で何らかの作用を起こす種類の植物の総称である。性質子を遮断する霊遮布にはこの種類の植物の繊維が含まれており、マークが持っていた白衣は純粋にただ当たった性質子を吸収するというものになってた。今マークの手を自由を奪う手錠には非常に細い糸が巻かれている。それが集霊植物であり、マークの記憶と予想が正しければチェニラタリアという植物のはずである。このチェニラタリアは自分の周囲の性質子をとてもよく集める性質があり、群生地ではよほどの霊力がないと一切の心術が使用できないという。
 そこまで考えてマークは我に帰る。一度思考に沈んだお陰で少し落ち着きを取り戻したのだ。どうにか顔を引きつらせつつつまらなそうな目を特別顧問に向けるアドラスや床に倒れふす館長、
一切表情を変えない特別顧問を認識し、パニックで切れた息を落ち着かせながら喋る。

「ど、どうしてあの人がこ、ここで……死んでいるんですか?」

 アドラスは再びつまらなそうなため息を吐いてから立ち上がり、何かを思いついたような感じで顔を明るくしたが特別顧問のほうを見てもう一度つまらなさそうなため息をする。

「マーク君は、あの人の図書館で論文をずっと作ってたんだよね」
「は、はい」
「それで、彼は少なからず論文の内容を知っている可能性があった。だから死んでもらった」

 もう一度言われ、マークを強く理不尽な現実感が襲う。困惑している間に、アドラスが追い討ちをかけるように、愉快そうな顔で言った。

「つまり、君が図書館で作業をしなかったら彼は死ななかったんじゃないかな!」

殺したのはお前らじゃないか、マークはそう言おうとしたが言えない。アドラスの言ったことは一応事実である。館長はマークの作業を見なければ死ぬことは無かった。本来彼が感じるべきでない罪悪感が彼を襲う。まともに館長の遺体を見ることが出来ず、目が泳いでしまう。崖に立たせた上にいたずらに苦しめるだけの毒まで飲ませるのか。しかし彼が館長の死ぬ原因を間接的にも作ってしまったのはたしかだ。その現実から目を背けるということは、彼の良心が許さなかった。強く唐突で理不尽な、避けるわけにはいかない現実に打たれる。アドラスから受けた嫌がらせで生まれた苛立ちなどすぐさま消えてしまい、罪悪感で心が埋め尽くされる。初めて死人を見たという恐怖や悲壮感、それが殺された人間であるというやりきれなさなどもあったが、その感情が全てどこかへ流れていった。

「じゃあ、念のために正式に確認しておこっか!」

 そんなことには構わず、いや、そうであるからこそアドラスが明るく話しかけてくる。マークは泳いでいる目をアドラスに向けた。

「あそこで死んでいる彼は、君が論文を書き上げていた図書館の館長で、彼は君の作業を見ていたね?」
「…………はい」

まるで罪の清算を乞うような声でマークは答えた。その様子にアドラスが満足した顔をする。

「そーかそーか!人違いじゃなくて良かった!じゃあさっきの部屋に戻ろっかぁ!」

勢いよくポーズをつけながらドアを閉めてからアドラスは先ほどの部屋へ向かって歩き出す。アドラスの後ろには気が沈んで肩が落ち、空ろな目でアドラスを見つめるマークがいる。打ちのめされたせいで進むことが出来ないマークに特別顧問はまた声をかけた。

「貴殿のせいではない。我々が全面的に悪いのだ。あの男の戯言に耳を貸す必要は無いぞ」

そう言って特別顧問はアドラスの後ろへ行く。言われてマークは少し考え、今は部屋に向かおうと保留にする。そのぐらいには回復した。少し駆け足で追いついて、自分の処遇について聞くことにする。今の隙に逃げようとは思えなかった。構造が分からない建物で心術は一切使えず、体はボロボロ。この様な状態でリシアのような相手がいる複数いるであろう場所から逃げ出すのは不可能だ。既に先ほどの部屋のドアを開けているアドラスは出るときと同じように、マークに部屋へ入るように促している。

「じゃ、珍しく結論から教えちゃおっかな!」

 部屋に全員入った。特別顧問は窓際で外を眺め、マークとアドラスはソファーに座ってガラステーブルを挟み、向かい合っている。結論を言うのを無意味に先延ばししているというのをアドラスは自覚しており、そういうことをするのを好んでいる。そんな彼が今回は結論から言うという。マークには嫌な予感しかしなかった。会ってから今までこの男は愉しむこと以外考えておらず、基本的にマークの精神をいたぶったりじらしたりしていた。結論から言う、といわれたって不安にしかならない。

「君にはねぇ、科学発展のための実験台になってもらう!」
「えっ!?」

マークは思わず我が耳を疑った。自分の運命が館長と同じものだと思っていた彼には予想外の扱いだからだ。そして反射的に質問をする。

「こっ、殺すのではないんですか!?」
「あー、それそれ。そういう反応すると思ってたよ」

実に予想通りだ、とアドラスは口を吊り上げる。

「普通なら遺体とかを残したりしないといけないからさっきの彼みたいになるんだけど、君は身内がいないからそういう処理が簡単に出来るんだ」

そう言われて、マークの脳裏に館長の死んだ姿がフラッシュバックし、思わず黙ってしまった。その間にもアドラスは続けた。

「行方不明にするのも案外面倒でねー。バレない具合に死体にして返すほうがうちとしては楽なんだ」

館長の死もそうだが、実験台というただならぬ単語が彼には気になっており、アドラスに聞く。

「て、帝国で人体実験って、それに一体何を……」
「んー?帝国ではそんなことしてないよ。見られたら大事だし、結構危ないし」
「帝国の……外?外国?」
「あー、惜しい!実はね……」

アドラスが言おうとしたところで、再び怒声が部屋に響く。

「アドラスッ!口を慎めッ!」
「うー、怖いっ!」

特別顧問の声におどけた調子で肩を震わせるアドラスがやれやれといったような仕草をする。

「とまぁ、言えないわけだ。勘弁してくれ」

そう言った後、また顔を愉快そうにする。また何か良からぬことを考えてるなとマークは思った。

「向こうの人からも君に熱いオーダーが来ていてね!君みたいな奴は中々いないそうだよ!」
「え……?」

マークには体的にも霊的にも特徴は無い。普通の中の普通であり、実験に役立つとは思えない。人体実験のことなど知らないマークは憶測でそう考え、戸惑う。

「ほら、君ってかなりニュートラルに性質子を持ってるみたいだからさぁ!霊薬とかその辺の実験にはぴったりらしいよ!」
「…………」

わが身ながらもなるほど、とマークは思った。アドラスがそのまま愉快そうに言う。

「楽に実験台に出来る上にすごく実験台にぴったりだなんて、君は実験台になるために生まれてきた様なものだね!!」

その一言はマークの逆鱗に触れるものだった。目を見開き、生まれてから一度もしたことの無いような鬼のような形相で立ち上がろうとする。自らの行った努力を、自分の歩いた人生を全否定するような言葉が、アドラスから、マークを捕らえ、館長を殺し、その状況に困惑したりするマークをあざ笑った男から発せられたという事実はマークにとって我慢ならないことだった。

「……ッ!」

立ち上がり怒号を発しようとするが、それによって足に走った痛みで少し我に帰る。少し浮いた腰はソファーに落ち、それとともに頭が冷静になる。自分が怒り狂ったところでこの男はそれをまたあざ笑うだけなのだ。何の意味も無い。

「くふっ……。そ、それでだね、局長として君に言うことはこれで全てだ。どうする?何か聞きたいこととか言い残したいことはあるかな?」
「……ありません」

少し考えてからマークは、何か言い残すのは無駄と考えた。誰かに何か伝わるとして、そうして無責任に言葉を放り、背負わせるのも気が引けるのだ。

「ふーん。つまんないけど楽でいいや。言い残すって言っても別に最悪の場合死ぬだけで普通は廃人になるぐらいじゃないかな。お願いしたよ隊長さん」

恐ろしい未来のヴィジョンが脳裏を過ぎった瞬間、マークは気絶する。

「あんまり遊びにつき合わさないでくださいよ。僕らだって忙しいんです」

マークを何らかの方法で背後から気絶させた、地味な男が言った。その男はいつの間にか部屋に入っており、いつの間にかマークの後ろに立っていて、いつの間にかマークを気絶させていた。

「いいじゃない。目が覚めたらまた別のところにいたってのも面白いと思うよ」
「それは局長だけです」
「そうかなぁ、ちょっとした旅気分が味わえるだろう?というわけでさっさと運んじゃってよ」
「了解です」

地味な男はいたって普通に床に倒れているマークを持ち上げ、運んでいく。そうして地味な男が出て行った後、特別顧問はアドラスの方を向いた。

「彼は本来無辜の人間だ。もっと丁寧に扱ったらどうだね」
「そんなのつまらないじゃないですかぁ!」

初めからそう答えるのは分かっていた特別顧問は少し食い気味に返す。

「それに、死者には敬意を払うべきだ」
「えっへっへ。騎士ですか特別顧問どのは!」

アドラスの発言を大抵無視する特別顧問にしては珍しく、その言葉に反応した。

「我輩はその様な時代錯誤もはなはだしい者ではない」
「わはは」

意味ありげに笑うアドラスに、仕返しの意味もこめて特別顧問は言った。

「さっさと仕事に戻れ」

部屋から出て行く特別顧問にへいへい、と生返事を返しながらアドラスは面倒そうに仕事を始めた。もうマークのことなど覚えてすらいないような雰囲気を漂わせている。彼にとってマークはその程度の、一時の暇つぶし、ただのおもちゃに過ぎなかった。






 マークは再び目覚める。彼の乗っていた馬車の揺れと潮の香りが意識を表へ押し上げた。ぼんやりしていた頭がはっきりして来るに連れて自分のおかれた状況を思い出してくる。夢であって欲しいと願ったが、見知らぬ粗末な馬車に乗せられている現実は夢ではないと彼に教える。自分がこれからどうなるかは分かるが今どうなっているかが分からなかったので、とりあえず揺れる馬車の中を眺めてみた。
 いたって普通の、安価で粗末な馬車だ。使い古された幌は所々破れたいるところに布を宛がっており、わずかな隙間から赤光が漏れている。マークは外の様子を見たいと思い、手を動かそうとするが手錠で不自由になったままだった。心術も依然として封じられたままであり、外を見る手段は無い。更には足もロープで拘束されていた。潮のにおいから察するに海が近い場所で、赤い光が漏れているのを見ると夕方なのだろうが、それだけでは全く状況が分からない。マークは馬車の後方におり、前方には小さな男の子をつれた30代ほどと思われる男がいた。二人とも薄汚れた風体で、ボロボロになっている色あせたポンチョを羽織り、マークと同じように手足を拘束されていた。男は子供を庇うような感じで抱き寄せており、子供はそれに頼るように身を寄せている。
 マークは何か知っているかもしれないと思い、声をかけることにした。

「あっ……、あの」
「……―――?……起きたようだな」
「うっ、あー。は、はい」

どうやら暫くの間声を出していなかったようで、調子の外れた声を出してしまった。少し整えてから返事をしてきた男にまた声をかける。一瞬声が聞き取れなかったような気がしたが、気に留めない。

「その、ここは、どこなんでしょうか?」
「さあな、分からんよ。俺たちが馬車に積まれたときにはもう坊主、お前がいた。お前こそ何か知らないか」
「このまま、人体実験の材料にされるって言われました」

男はそれを聞いて少し唸って考える。男の言葉は流暢ではなかった。傍らにいる子供はマークの方を見つめている。男が考えたあと、マークの知らない言葉でつぶやいた。

「―――――――」

マークには全く意味が分からなかったが、どうにも一人ごとのような言い方だったので気にしない。

「人体――か、帝国の奴ら、俺たちをなんだと思ってやがる。なぁ、坊主」
「……あの、つかぬことをお聞きしますが、貴方は?僕はマークヘリオ・アーデルバーグです」

男にそう言われてたが、どうにも含みのある言い方なので男の身の上を聞く。男は少し驚いたような顔をしてから言った。

「俺は、ユド・アニド。こっちは息子のイィド・アニドだ」

異言語で男、ユドが息子のイィドに何かを言うと、イィドは挨拶の礼をする。

「その名前は、帝国の生まれだろう。帝国の人間が奴隷として売られるなんて変だな」
「帝国の生まれ?ここは、ユドさんの生まれた場所は帝国の外なんですか?」

それを聞き、ユドは少し不機嫌そうな様子になる。

「ここは帝国だし、俺は帝国の生まれだよ」
「……?」

マークは意味が分からず、首をかしげる。その様子を見て、ユドが肩を落とす。

「もしかして知らされてないのか?貧民地帯のことを」
「貧民地帯って、街の郊外にある様な?」

ユドは、マークの答えに首を横に振った。

「そういう街のおまけみたいな小規模なモンじゃない。貧民の町、大きさだけなら都市と呼べるものだ」
「そ、そんなものが……」

あるわけ無い。そう言おうとした。帝国全図にその様な場所についての記述は無く、嘘だと思ったからだ。しかし情報局のことを思い出して口を止める。帝国にはあといくつ、どんな隠し事があるのだろうか。

「テガアトラって知ってるか?」
「確か、昔リラカトラに戦争で滅ぼされた……」
「そうだな」

テガアトラは、210年ほど前にリラカトラとの戦争で失われた国である。しかしそれと何の関係があるのか、マークには分からない。

「その跡地は今、俺たちみたいな貧乏人の住処になってる。帝国の民族や帝国側の民族が、それ以外の民族や帝国にとって不都合な奴を押し込むための、ゴミ箱みたいな場所だ」
「…………」

別にマークは、帝国が別に真っ白な国であるとは思っていない。多少なりとも黒い部分はあると思っていた。しかし、いざこうして黒い面を見せられると今まで自分の過ごしていた時間がどれほど幸せで、どれほどの犠牲の上に成り立っているのか考えてしまう。

「それが帝国の奴ら曰く貧民地帯と呼ばれる場所なんだが、そういうのが認められない奴らがいる」

考え事へ引き込まれそうになっていたマークは、ユドの声で意識を戻した。

「奴らレジスタンスは、自由と権利を勝ち取ると言って人を集めて、最近大きな騒ぎを起こした」
「ユドさんもその中に……?」

ユドはイィドを見て、バカヤロウ、と静かに言ってから続ける。

「俺はこいつだけで精一杯だ。レジスタンスの奴らは奴らで勝手にやってくれりゃ良かった」
「じゃ、じゃあ何で……」
「最近」

少し切実そうな声でユドがそう言ってから一拍入る。

「最近、レジスタンスの奴らが敗北した。それだけなら、それだけで済めば……」
「一体何が……」
「帝国が反抗した報いだっつって、粛清を始めた。生き残った俺たち男は労働力になるからって奴隷にされた」

それを聞き、マークは息をのんだ。懐かしいものを見るような目を、ユドはした。

「自由はそれなりにあった。権利なんざ無くても俺には子供がいた。皆、生きてたんだ……」

男の目には涙が浮かんでいた。声は今にも枯れそうだ。

「くそ、帝国め……。なんでこんなことに……」

マークは申し訳ないと、聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った。

「ご、ごめんなさい……。悪いことを聞いてしまいました……」
「……いや、いいんだ」

鼻をすすってから、ユドは言った。

「誰にも何も言えないまま、知らずに人体――なんて、勘弁だ。自分の子供に愚痴るわけにはいかねぇしな」

ユドは再びイィドを見てから悔しそうな顔をする。

「せめて、せめてこいつだけでも逃がせてたら……」

マークは二人の様子を見て、自分に父親がいたらこんな感じだったのだろうか、と思った。イィドの母親、ユドの妻はどうなったのだろうか、と考えたが、それを聞くのは酷なことなのかもしれないだろうと、マークは質問するのをやめておく。そこで、ユドは思い出したように、マークに話しかける。

「そうだ、坊主はなんでここに?」
「………………」

少しマークは自分の置かれた状況についてまとめる。自分の書いた論文が、帝国の機密文書の内容を知っているかのようなものだったので捕まり、実験台として優秀であり、親しい人物が少ないためにこうして運ばれている。それが彼の今の状況だった。頭の中でまとめてからユドにそう話す。

「災難だったな。坊主も精一杯だったのに」

そう言われて少し救われる。マークは自分のことを、彼らから咎められるべき身分の人間だと思っていたが、少なくともユドにとってはそうではないようだ。

「……気絶させられている間に馬車に積まれたのでしょう。ユドさんはどこで積まれたんですか?」
「いや、分からない。俺は貧民地帯から遠くには行ったことが無いんだが、積まれた場所は貧民地帯から離れた場所だったからな……」

積まれてからは外なんて見えなかった、と諦めたような顔でユドは言った。マークも同じような顔で、そうですか、と言う。
 しばらく、馬車の中に沈黙が居座った。時間が経って潮の香りが強くなるに連れて、煤けた空気の臭いがそこに混じってくる。波の音が大きくなってきたな、とマークは思った。
 やがて馬車は止まり、幌の中に沈みかけの日の光が差し込む。開けたのは見知らぬ普通の運送業者だった。申し訳なさそうな顔をする小太りの中年で、今にも泣きそうである。その後ろには武装し、マスクを被った人間が3人いる。

「降りろ」

 マスクの、声からして男と思われる人物がそう言ったので、マークとユド、それとユドに連れられるイィドは降りた。外は岬を申し訳程度に木で整えた程度の、港と呼んでいいのか判断がつかないような小さい港で、頑丈そうな蒸気船が泊まっている。
 ユドはイィドを庇うように連れる。しかし、無意味なことだと理解している。悔しそうな、悲しそうな顔をしていた。失われるものが自分以外無いマークにその光景は酷く堪える。運送業者の男は、降りる途中に小さい声でささやきかけてきた。

「すまねぇ……、俺も、俺も……」

苦しそうな声を出す男を見て、マークは礼をする。なぜか、そういう気になった。

「あの船に乗るんだ。さっさとしろ」

 腰の武器にわざとらしく手をかけて先ほどのマスクの男が急がせる。馬車から離れていき、煙突から蒸気を吐く、鋼鉄を貼り付けた船へ向かった。他にも連れてこられた者たちがいるようで、マークたち以外は船に渡された板で船へ入ろうとしている所だった。静かで無機質で陰鬱とした雰囲気が流れる、雲の無い夕方の磯の岬でマークは見張りとともに船へ向かっていく。板を渡って船に乗り込む直前に、陸地の方を見ると、遠くで自分たちをここまで運んできた運送業者の男が、二人いるマスクの人物の武器で殺されていた。いよいよ死、もしくはそれと等価と呼べるものへ向かわされるという現実を理解し虚ろな心持ちになっているマークは、それを見てさらに虚しくなる。その後今生の別れだろうと、帝国のほうを見た。

「おい、早くしろ。ここで死にたいのか」

そうして呆けていると、マスクを被った見張りが腰の武器に手をかけていた。別にどっちでもいいと思ったマークは、とりあえず船に入る。呆けている間にあの親子は先に行ってしまった。

「出発するぞ!集まれ!」

乗り込んだあと、甲板で一人の男が叫んだ。すると、海岸で様々な仕事をしていたマスクを被った人間が駆け足で船へ向かってきた。

「全員いるか確認しろ!」

 マークはその間にも船の下部の方へ向かう。到着すると、そこでは人が最低限のスペースで拘束されていた。拘束をする役目であろう男が、マークを残ったスペースのうちの一つへ連れて行き、拘束する。ずいぶん窮屈だ、そう彼は思った。
 出航の準備が出来たのか、船が動き始める。拘束されている間は暇なので、マークが暇つぶしに選んだのは思考だった。それ以外にやることはない。
 蒸気を出す燃料を燃やす音が消えた。PPTでの運行に移ったのだろう。浅瀬ではPPTが故障したりすると乗り上げたりして船が壊れる可能性を考え、物的手法により船を動かす。そして浅瀬を離れるとPPTによって船を動かす。蒸気機関は発着のときや緊急時、乗員のPPTが足りなくなったときに使用する。彼は本で読んだ知識を思い出した。今となってはどうでもいいことだ。
 マークのいる空間では、すすり泣く声や悲しそうな話し声が聞こえる。一体、誰が悪いのか?誰がこの様な状況を作り上げたのだ?まず彼は、それについて考える。精神を破壊される前に、誰を憎んだらいいのか知りたかった。
 マーク自身の身を考えるとまず初めに挙がるのは帝国情報局だ。マークをこの状況に直接陥れたのは彼らに他ならない。アドラスは特に憎かったが、それは個人的な部分に過ぎない。義憤を感じるような悪。マークが知りたいのはそれである。明確な憎むべき悪がいるかどうかは分からないが、このやるせなさの元を憎まずにはいられない。
 次に挙がるのは、この船にいる、奴隷以外の者たち。恐らくアドラスが言おうとして特別顧問に怒鳴られた何か、それが彼らなのだろう。目的も正体も分からない相手であり、良く分からない。
 マーク以外の奴隷たちを考えれば、帝国軍が悪いのだろう。レジスタンスが負けたから、レジスタンスの本拠地に住む住人を粛清する。何と酷い見せしめだろうか。無関係な人間を罰として粛清したとしても、話に聞いた貧民地帯の人間は帝国軍をより恨むだけだ。
 しかし所詮、情報局も軍も、この船を動かす者たちも何らかの手足に過ぎない。立場が違うとはいえ、殺された運送業者の男とさほど差は無い。では、それを動かす頭脳を憎むべきなのだろうか?この船の人間をまとめる人物など知らないので、考えないことにする。誰かも分からない人間をはっきりと憎むことなど出来ない。情報局も軍も、帝国政府の決定によって動いている。その頂点に君するのが皇帝だ。ただし、帝国政府の最高意思決定者であるというだけで、皇帝一人の意思によって帝国が動くわけではない。政府だって様々な部門に分かれ、そこで様々な権限を持つ様々な人が働いている。誰がはっきりと悪いだなどとは言い切れない。更に、帝国政府だって何も全ての民を苦しめたいと思ってはいない。マークのような孤児とて、なんだかんだ言って普通に幸せな生活が送れていた。帝国民の幸福のために政府で働く人間も多い。やり方というものがあると思うが、粛清とてレジスタンスをまた発生させないための判断なのだ。しかし、帝国民が大多数だからといって、一部の貧民地帯の人間、それでもとても大勢なのだろうが、彼らを踏みつけて得た幸せは正しいとは言えないはずだ。ただ帝国民は、自分たちが一部の人間を踏みつけて幸せを得ているということを知らない。彼らが無知であることは罪なのか?それともこの事実を隠している帝国に罪が?マークには分からない。誰を憎んだらいいのか、誰のせいなのか、判断がつかなかった。
 その問題は流し、この船に乗っている者たちが何者なのか考える。実験をする様な組織であることは間違いない。そして、武装をしているような組織でもある。アドラスは、今は戦争が起きそうな微妙な時期であると言っていた。なので、外国の研究機関であるとは考えにくい。マークは別に世界情勢に詳しいわけではないのではっきりしたことは分からないが、何らかの非政府組織であると思われる。そこから察するに、現在はサディオラ海域と呼ばれる地域に向かっている可能性が高い。
 サディオラ海域とは、中規模な島がある程度密集している地域のことを指す。強力な国家以外の国の殆どがここに集中しており、日夜国家が生まれたり滅んだりしていると言われている。勢力図は常に流動し、危険も多いこの地域は地図の作成を放棄され、無法地帯となっている部分も見られる。非合法な実験を行うような組織がありそうなのもこの地域だ。
 人体実験を行うような組織である。どうせまともな組織ではないだろう。そこでの扱いを想像し、マークは身を震わせる。今までの生活に戻れるものなら戻りたい。これはまるで緩やかな死だ。そう思うと、自分が親しくしていた人のことを思い出した。
 この暗い雰囲気の中、初めに思い出したのはデニーのことだ。無駄に明るく、無駄に絡んでくる少年。彼と縁が切れるような状況は中々想像がつかなかったが、いざこうして切れてみると寂しいものだ。そうマークは思った。自分がいなくて彼の成績は大丈夫だろうか。なんとも日常的な考えに、マークは懐かしくなってこのような状況だというのに、つい笑ってしまう。
 それに続くように思い出したのは、ロジェリシャットのことだった。彼女のことを思い出してまずマークは、申し訳ないと思った。論文の勝負の決着もそうだが、マークは彼女には自分が友人になるという、一種の約束をしていた。それをこの様な形で違えてしまったのだ。せっかく関係が良きものへ変わろうとしていたというのに。今日、もしかすれば昨日自分が機関に行かなかったことを、彼女はどう思うだろうか?回りの人間には逃げただのなんだのと言うだろう。しかし、心の中は違う。そのはずである。もしかしたら用が済んだあと、意を決してマークの家へ乗り込んでくるかも知れない。そして遅かれ早かれマークが消えたことを知るはずだ。その時、彼女がマークを軽蔑するか心配するかは分からない。常識的に考えれば心配すると思うが、それでは自分を買いかぶりすぎなのではないか、とマークは自分を少し卑下して考える。もしかしたら彼女ほどの行動力と立場があれば、マークがどうなったか知ることができるかもしれない。そうなった後の彼女の行動はもう分からない。悲劇であると憂うのか、マークの人生の顛末に涙するのか、激高して何らかの行動を起こすのか、それともそれほどまでは気にしないのか。とにかくマークは、今後の彼女の人生で、彼女が望んでいたような友人が出来ることを願う。
 そして、孤児院の皆を思い出す。最近訪れていなかったので、行っておけば良かったとマークは思った。元気でいるだろうか。少なくとも自分のような目にはあって欲しくない、と彼は思う。幼いころに孤児院の前で捨てられていたマークが14歳になるまで育った場所だ。懐かしまないわけが無い。最後に訪れたときの皆の顔を、マークは思い出していく。戻れるなら戻りたい、もう一度、切にマークは思う。
 孤児院の面々の中で最後に会ったレーネはどうしているだろうか。自分の言ったとおり孤児院で働こうと思って、手伝いをしたりしているのだろうか。マークと長年ともにいた彼女であるが、特にマークが彼女に思うところは無かった。レーネは、マークが死んだとして悲しみはすれども、心を乱すようなことにはならないはずである。それは無関心ではなく、彼女が強い人物であるからだ。マークが死んだとしても、彼女の中のマークへの憧れは死にはしない。後の人生も、幼い頃の憧憬を胸に強く生きるのだろう。マークは、彼女がずっとそのままであるという安心感を感じた。
 それから、館長のことを思い出し、再び彼は罪悪感を覚える。ただ、マークの作業を見ていた。それだけが理由で殺されてしまった館長。何が原因で死ぬか分からないとは言うが、あれではあまりに可哀想である。マークが図書館で作業をしたのは、単純に本が近くにあり、一々行き詰ったときに簡単に本が取れるからという理由からだ。自分が自宅で論文を書いていれば館長は死ぬことは無かった。未来のことを知らないのなら仕方の無いことだが、マークはそう思わずにはいられなかった。
 そう考えていると、ふとあることに気づく。万学の本の一斉廃却は情報を隠すためにやったのではないか。マークが深夜の図書館で手に取ったあの万学の本。あれは帝国の機密に関わる技術につながるような本だったのかもしれない。ならば、他の廃棄された本も機密に関わっているのだと思われる。マークは箱詰めの作業を手伝ったが、結構な量があったはずだ。カモフラージュのために廃棄された本の量を差し引いても、帝国が機密にしている技術はかなりあるということになる。些細なことであるが、また一つ帝国の暗い部分を見つけてしまった気がしたマークは、自分の今まで立っていた場所がとても綺麗な場所とは言えないものだと思い知る。実際見せられ、聞かされ、気づかされると、すんなり理解できてしまった。
 
「くぁ……」

 どうやらマークは長い間考え事をしていたようで、彼から自然とあくびが出る。気絶して寝ていたのに、案外眠くなるものだなとマークは感じる。悲しげな雰囲気を醸し出す呻き声やすすり泣きは少なくなっており、だいぶ甲板の下にある収容所は寒い。外はもう夜なのだろう。収容所の中心にロウソクが一本、申し訳程度に灯されている。その陰は、火の揺らめき以外では寸分たりとも動かない。意識がうつらうつらとぼんやりしてきて、とうとう眠ってしまう。
 眠っていたマークが目覚めたのは、誰かに揺り起こされたからであった。睡眠をとったために体温が失われており、海水で温度を奪われた船の中の気温に身を震わせる。マークを揺さぶる誰かは起きたのに気づき、マークから手を離す。ぼやけた眠い目をこすってマークは目の前の人物を確認する。すんなりと手が動いたことから彼は、手足の拘束が解かれていることを知った。

「マークですか?」
「え?は、はい」

 お世辞にも綺麗とは言えないリラカトラ語を話す青年の声に反応して声のほう、前を向くと、奴隷として連れてこられた人間の殆どが拘束を解かれて立っているのが見える。頭が少しはっきりしてきたマークは、他の人もどんどん拘束を解かれていっているのを見た。

「これは、一体……?」
「ユド、通訳を頼む」
「おう」

 マークが驚いている横で、マークを起こした男とユドが会話をしていた。マークの知らない言葉なので、彼には意味がわからない。

「こいつはレジスタンスのリーダーで、奴隷としてこの船に乗せられていたんだが、どうにか頑張って拘束を外したらしい」
「拘束を外すって……、手錠を素手で破壊するわけにも……」

 集霊植物の糸がたくさん巻かれているんですし、と言おうとしたところでレジスタンスのリーダーの手錠に傷が大量についていることに気づく。

「どうやら一晩中糸を噛んでたらしい。それでこうして人を集めて船を乗っ取ろうって考えてる」
「……やればできるものですね。でもこの部屋には見張りがいたはずですが……」

 ユドはあごで入り口のほうを指す。見張りは完全に寝入っていた。

「なるほど……。それで、僕も戦力として起こしたという訳ですか……」
「いや、坊主は戦わなくていい」
「えっ?では何で起こしたんですか」

 このまま実験台になるよりマシだ、戦おうと思っていたので拍子抜けする。マークの質問にユドは言いにくそうに答える。

「あぁ……。知り合いの確認の時に、坊主のこと喋っちまってな……。そしたらあのリーダーが、もし帝国とまた戦うなら切り札になるかも知れないって。だから坊主は護衛の対象として念のために起こしたらしい」
「それは過ぎた考えですよ……。僕の知っている情報では切り札になりえません」
「そうか」

 マークは自分の知っていることがそこまで重要でないと考えている。所詮兵器に流用できる技術のうちの一つだけであり、帝国を覆せるような情報ではない。それを聞き、ユドは隣にいたレジスタンスのリーダーにリラカトラ語ではない言語で話しかける。

「この子はそこまで重要なことを知ってるわけじゃない。巻き込むのはやめてくれ」
「残念だ……。なら、せめて戦ってくれる様に言ってくれないか?」
「おいおい、子供だぞ」
「レジスタンスのメンバーにはこの子供より幼い者もいた」
「まったく……」

 ユドは呆れた様子で、眠そうな目でこちらを見ているマークにリラカトラ語で話しかける。

「リーダーが、一緒に戦わないか、と言っている」
「やります。このまま実験台なんて真っ平です」
「いいのか?俺たちに任せるって選択肢もあるんだぞ」

 こんな状況に立たされてマークは、相当の鬱憤が溜まっていた。帝国の闇に関わる全てに対する義憤が少しでも晴らされるならそちらのほうが良かった。 

「それでもです」
「血の気の多い奴らばかりだ……」

 またも呆れた様子でユドは、レジスタンスのリーダーにマークの返答を伝える。そこからマークとレジスタンスのリーダーは、ユドを通して会話を始めた。

「よろしく。俺はリーダーのケヴィだ」
「マークヘリオ・アーデルバーグです」

 親交を深める礼をした後、リーダーのケヴィはマークに質問を少しする。

「戦ったことは?」
「霊人と一度だけ……」

 それを聞き、少しユドとケヴィは驚く。しかしその件について掘り下げるのは脱線することを意味するので次の質問にケヴィは移った。

「何か訓練は受けていたか?」
「護身の体術と、PPTについての講義を受けていました」
「心術兵向きか……」

 何かを考えつつ、ふと気づいた様にケヴィが質問をしてくる。

「……人を殺したことは?」
「……ありませんよ、そんなこと……」

 マークは館長のことを思い出し、少しぶっきらぼうに答えてしまう。ユドがそれを伝えると、ケヴィは納得した様子でユドに通訳してもらう。

「坊主は怪我した奴をこの部屋に運んでくる役目だそうだ」
「分かりました」

 それからケヴィはユドと二言ほど話したあと、何らかの準備をしている集団に声をかける。集団はケヴィのほうに注目し、話を聞いていた。

「準備が完了したらすぐに行こう。ここで勝てば必ず助かる。息を吹き返すことが出来る。帝国に一泡吹かせてやろう」

 戦闘に参加すると思われる人々は大きな声こそ出さなかったが、力強くうなづき、異様な熱気を帯びている。ユドはもうすぐ始まりそうな雰囲気を感じ、集団のほうへ歩いていく。マークはどのように戦うのか気になり、質問をする。衛生兵のような役割ではあるが、作戦の動きを知っておくのは当然である。

「レジスタンスの人達は、どう戦うんですか?」
「全員が死力を尽くし全力を発揮して戦うそうだ」
「…………ありがとうございます」

馬鹿げていると思ったが、自分は戦いに関して門外漢であると考え、余計な口出しはよそうという結論にマークは至る。予想であるが、彼が思うに今の時間は夜。夜襲をするなら全員で一気に突撃したほうが有効である。そうマークは思った。
 やがて準備は終わり、再び人々はケヴィの周りに集まる。

「俺たちは負けて、こんな船に乗せられちまった。それは帝国のせいだ。俺は帝国が憎い。昔から大嫌いだったが、今はもっと嫌いだ。お前たちだってそうだろ?」

そういわれ、人々はうなずいたり怒りの表情を見せたりしている。

「これはせめてもの復讐だ。やってやろうぜ!」

ケヴィが腕を振り上げて叫ぶと、集まった人々も同じように叫ぶ。なんてことを、とマークは思う。これでは台無しである。なぜあの見張りがいたか、というと当然この人々を収容する部屋の異変を知らせるためだ。その異変が知らされたときの準備は行われているはずであり、このように自分から異変が起こったと示すような真似は避けるべきであった。
 マークの心配は見事的中する。入り口の見張りが目を覚まし、寝ぼけつつも戦闘準備をすぐさま整えてしまった。もちろんPPTを組み込んだ武器も持っている。PPTは数すら覆してしまうほど強力だ。見張りが持っていた武器がそれほどの威力を有しているかは別として、丸腰の人間がPPTを持った人間を倒すなら不意打ちが最も有効である。この様に叫ばず、武器を奪ってから戦うほうがずっと良い。元のリーダーはケヴィではなかった。本来のリーダーは処刑され、既にいない。ケヴィはその代わりを務めているに過ぎない。

「暴動だーッ!」

見張りは役目を果たすべく、大きく叫ぶ。ここまで音をなるべく立てないように準備してきたのが全て水の泡だ。それに構わずケヴィたちは見張りの男にかかり、複数人で打ち殺そうとする。当然の如く見張りは自らの身を守るためにPPTを組み込んであるであろう武器を発動させた。見張りが持っていた武器は剣の形状をしており、発動した心術は組み込まれたPPTで指定された位置に使用者から突き放す力場の壁を発生させるものだった。それによりあるものは収容所に押し戻され、あるものは収容所の入り口付近の壁に押し付けられて動けなくなる。壁に押し付けられた人はその間に武器で切りつけられて重傷を負わされた。PPTに対抗すべく収容所に押し戻されたケヴィたちは見張りの前の空間に混素を乱雑に放ち、とにかく霊的現象を発生させられないようにした。混素が空間に満たされ、見張りが戸惑う。その間に他の人達が見張りを取り囲んでからその手の武器を奪い、集団で殴る蹴るを繰り返して殺害する。

「よし!甲板に出て奴らを全員殺してやる!」

 奪った武器を掲げてケヴィが甲板へ向かって走り出す。続く人達も応えるように大声を出す。

「あれじゃあ、戦ってる自分に酔っているだけじゃないか……」

何を言っているかは分からないが雰囲気を何となく感じ取ったマークはつぶやいた。
 階段を上って甲板のほうへ行くのを見てから、マークは入り口の脇で血を流しうめく人を収容所に戻し、手当てを試みる。マークと同い年か少し下ぐらいの子供、イィドもそうだが、彼らも入り口で傷を負った男たちを収容所に寝かせた。

「傷口を焼いて塞ぎます!痛いですが我慢してください!」

 出血が酷く、このままでは失血死すると考えたマークは熱素霊紋を怪我人の前で描く。内容は傷口と同じ形に熱を発生させるというもので、発生した熱は怪我人の傷口を焼いて塞ぐ。怪我人は大きく叫んで身をよじらせた。叫んでいる内容は分からなかったが痛みを苦しむようなものというのは明らかだ。痛みのショックで気絶してしまったが何とか出血は止めることが出来た。
他の怪我人を手当てしようとしている子供たちは手当ての方法が分からず困っている。混素で傷口を塞ぎ続けようとしてたり、冷素で傷口を凍らせようとしていたり、熱素で傷口を焼こうとしていたりしていた。しかし、混素を放出し続けることはできないし、凍った傷は体温で解ける。そもそもただ放っただけの冷素や熱素では効率が悪く、傷を凍らせたり焼くことすら出来ない。マークは見ていられず、熱素で怪我人達の傷を次から次へと焼いた。

「ど、どうやってやった!?」

 驚いて聞いてきた子もいたが、マークには何を言っているか全く分からない。しかし彼はこのまま自分一人で応急処置をすることは出来ないと思い、なんとしても伝えようと必死に考えた結果、床に鋭く秩素を放って自分の描いた紋様を刻む。形状紋の部分は傷口によって違うのでジェスチャーで傷口と同じ形にする、と伝えた。そんな間にも怪我人はどんどん運ばれてきている。甲板へ出て行った数の四分の一はすでに運ばれてきているのではないだろうか。マークが刻んだ紋様の意味を理解した子供たちは怪我人達の応急処置へ向かった。
 マークは周囲を見、甲板へ向かって怪我人を運んでくるべきだと判断する。怪我人を運ぶ役目である子供も運び込まれており、甲板は相当危険な状態だと予測される。階段を上り、甲板に出た彼はそこで争いがどういうものかを見ることになった。今までの彼自身の見てきた現実、経験からはかけ離れすぎていて、思わず身を引く。
 戦闘の状況は非常に酷いものであった。劣悪な装備、低い練度、利点と言えば戦闘員の数のみであるケヴィ側と、戦うには申し分ないレベルの装備と練度を持った船員側。二つが戦闘を始めればどうなるかは大体予測がつく。状況を見れば船員側の敗北は必至であろう。船の上で強力なPPTを発動させれば船ごと沈んでしまうことになるし、PPTの武器はケヴィ側に幾つか渡ってしまっている。船員側は押されていくだけであり、いずれは敗北してしまう。ただしケヴィ側は、勝てるといえども決め手は数のみであり、犠牲者を大量に出しながら戦っている。この状況を消耗戦と呼ぶが、その中でも悪い部類に入る戦いではないかと思われる。
 船の上には大量の負傷者や死傷者が倒れている。ケヴィ側の戦闘員の割合が多いそれは、マークにとって初めて見るものだ。そもそも彼が死人を見たのは館長の死体を見せられた時が初めてで、彼の常識から大きく離れたその光景は彼にとって非現実ではないかとも思えてしまえるものだった。
 目の前の惨状に気を取られていたせいで状況を確認出来ていないと思ったマークが周囲をもう一度見る。倒れている死体に目を奪われていたので、先ほどは生きて戦っている人間には目が行かなかった。

「誰も、動いていない?」

甲板の人間は敵も味方も皆、戦っている最中を切り取ったかのように静止し、一種絵画と呼べそうな光景を作り出している。彼は船の壁、船室の左側の外壁に隠れ、もう少し様子を詳しく見ようとする。すると、船室の正面の外壁、入り口付近の辺りから男の声が聞こえた。

「おい!隊長はまだ起きないのか!」

その問いかけに、船室の中から答えが返ってくる。

「だめだ!酒飲んで寝てる!」
「流石に基地に着くほどのエネルギーはねぇぞ!」

必至に叫ぶ男の様子を、壁から少し顔を出して窺う。男は上半身に特殊なスーツを着ていた。そのスーツからは太いケーブルが伸びており、先には動かすためのキャスターが四つついた大きく無機質な箱があった。

「あれは……、霊力貯蔵器?」

 霊力貯蔵器というのは、その名の通り霊力を貯蔵するための道具だ。内部には霊的現象を起こさないよう細心の注意を払って大量の細かい穴を開けた霊律鉱が入っている。霊人に匹敵するレベルの霊力を内部に貯蔵できるが、事故が多い。位置、季節などに左右されてしまう不安定な霊力を、常に同じ図形内に留めておくことは今のところ出来ていないので、研究中の代物のはずだ。使うにしても様々な要因にあわせてオーダーメイドし、季節ごとに使う貯蔵器を変えなくてはならないので、市民どころかそこらの貴族でも持つことは不可能である。
 止まっている人々から察するに、現在あの貯蔵器に入っているのは冷素のはずだ。そして人々は冷素の起こす現象の一つである、変化の拒絶を発生させていると考えられる。

「じゃあ、貯蔵器を破壊できれば……?」

 マークはこのまま状況を止めておくと何かまずいことになるかもしれないと思い、貯蔵器の破壊を決意する。そのために、まず彼は貯蔵器をより正確に見た。スーツもケーブルも貯蔵器本体も集霊植物の繊維で出来た布が全体を包んでいる。マークは、ならば物理的に破壊するしかないと考えた。

「いや、違うか……」

 集霊植物は既に外部で起きた霊的現象を否定することは出来ない。秩素で何かを飛ばしてケーブルを切ればいい。まずはその飛ばす何かを考えなくてはならない。あまり大きなものを飛ばしたら貯蔵器を使っている男に気づかれてしまい、飛ばしている物体を止められてしまう。しかし、気づかれずに飛ばせるものが貯蔵器の周囲には見当たらなかった。しかしマークは見えない、という単語で飛ばすものを思いついた。彼は大気を飛ばそうと思ったのだ。空気なら至近距離で飛ばせて途中で威力を失うこともないし、見えないので気づかれることもない。非常に名案だと、すぐにケーブルの位置を把握し、頭の中で秩素霊紋を組み立てる。

「出来た……!見てろよ……!」

 マークは心術を発動させてから己のミスに気づいた。

「この音はなんだ!?」

空気を飛ばせば当然風の音が出てしまう。ケーブルを切るために力を強くしているため、大きく不自然な空気の音と流れが出来てしまうのだ。保護ケーブルの内側にある何らかの霊力導体まであと少しと思われるところで、様子を見ながら秩素を放っていたマークは、貯蔵器を使っている男に気づかれてしまった。

「まだ残っていたのか!」

 失敗したと思ったときにはもう遅い。マークは男のPPTによって静止させられてしまった。難を一つ乗り切ったと男は安心したが、異変に気づく。

「音が止まってない!?」

冷素が止められるのは物理的な動きのみである。意識も止まってはいるが、『秩素を放つ』という意識がそのまま止まっただけだった。つまり、秩素の放出はそのままで、空気の動きもそのままなのだ。威力こそ弱まっているが、残り少ないケーブルの被膜を切るには十分だった。マークがせめてものあがきで秩素を止めなかったことが功を奏す。この様な計算をしてやったものではなかったので、認識も止められている彼にとって嬉しい誤算である。
 男が原因を気づく頃にはケーブルが切れてしまう。切り口からは大量の冷素が溢れ出し、切り口の周辺から周囲を凍らせていく。そして戦闘が再び開始された。

「やった!間に合った!?」

マークも動き出し、言う。静止までには間に合っていなかったが、彼に知ることは出来ない。

「このッ、クソガキ!!」

 貯蔵器を破壊され、怒った男がマークに武器を向ける。マークはケーブルを切ることしか考えていなかったため、その後のこと、今のように武器を向けられた時の対処をすることが出来ない。恐怖と驚きからくる声を発し、階段を降りて収容所のほうへ駆け戻っていく。しかし収容所には非戦闘員の子供や負傷した人間がいる。収容所に逃げこむわけには行かないと思った彼は、階段を降りきって少ししてから男と向かい合う。男は上半身にスーツを着たままだった。スーツから貯蔵器本体から取り外されたケーブルが背中から伸びており、長いケーブルは床を這っている。霊力を取り込むためのスーツにはまだ冷素が残っているのか、青く淡い燐光の線がスーツに浮かび上がっていた。

「ガキ……、ただで済むと思うなよ!」

 男は左手に持ったPPTをマークに向ける。甲板の状況を止めるためにも使われた、冷素を込めた時に停滞、運動の拒否を意味するPPTだ。いまだ体に痛みが残っている彼には避けきれる気がしない。だが熱素を満たせば運動の加速を起こす。熱素を男の持つPPTに流し込み、男の放出する冷素を超えて中和しきることが出来れば、一気に不意を打って攻撃することが可能となる。せめて超えなくても、発動を防がなくてはマークの命はない。男が右手に持っている武器で、動きが取れずに殺されてしまう。中和仕切れなかった場合は動きが少し遅くなる程度だが、それでも今の状況では致命的だ。だからマークは全力で熱素を男の左手にあるPPTに注ぐ。そして同時に男も冷素をPPTに満たしていく。その直後、マークの意識に、体に異変が起こった。

「失敗した……!」

男の動きが急に加速したように見えたマークは自身の体が遅くなったのを知った。

「お前の所為で貴重な道具が壊れちまったよ……。どうしてくれんだ!」

苛立った男はマークの腹を思いっきり足の裏で蹴る。感覚まで遅くなっているために鈍く長く遅い痛みが腹にとどまり続け、床でうずくまる。自分だけが取り残されるような世界の早さがだんだんと元に戻り、痛みも引きかけたところで、再び何もかもが早くなった。うずくまっているままの背中を蹴り上げられ、転がる。背中を押さえようと手を伸ばそうとしたら、今度は腹を再び蹴られた。そこから頭を思いっきり踏みつけられ、ただ痛みに悶える。
 あの時、マークの放った熱素が男の放った冷素を越えられる要素など何一つ無かった。男の冷素は貯蔵器から送られる霊力によってほぼ最大量を保ったままだったが、マークの熱素はリシアと戦ったときに一度底を突き、まだ完全に戻っていない。その上、先ほど応急処置で使用してしまった。そもそも男の冷素の最大量はマークの熱素の最大量を上回っており、万全な状態であっても勝てはしなかった。さらに言えば男が着ていたスーツにはまだ霊力が残っており、ある程度の差は無視されてしまう。
 マークがそれに気づいたときはもう遅く、ただなすすべなく男に殴る蹴るを繰り返されるのみであった。自棄になっている男の振るう暴力は、マークをより苦しませるようになり、感覚を遅らされていることもあって、非常に長い時間暴力を受けているように感じられた。実際は10分にも満たない時間だったが、マークにはその6倍ぐらい長い時間に思われる。
 男は疲れてきたのか暴行を止め、一度少し息を整えている。男は、息を乱しながら言う。

「くそっ。俺、ここで死ぬかもしれねぇ……」

情けなく呟いたあと、マークに向かって怒りの表情を見せた。

「それもこれも、お前のせいだ!」

そして手の武器を、斧を頭上へ思いっきり振り上げる。マークが直感的な死の恐怖を感じたその時、男は何かに引っ張られて後ろへ倒れた。再び感覚が戻ってくる中でマークが階段の上のほうを見ると、ユドがケーブルを引っ張っている姿が見えた。

「大丈夫か!?」
「ユド、さん」

 ユドは階段を駆け下りて、マークの安否を確かめようとする。その間に男は起きて、武器とPPTを構えた。男は死ぬものか、と必死な表情でユドを見据える。そしてユドも避けて通れるわけがないと男に向かう。ユドも武器を手にしている。恐らく戦闘中に奪ったものだろう。その武器は槍で、PPTが組み込まれていないタイプのものだった。槍は斧よりリーチが長いので有利ではある。しかし、PPTを持っているのと持っていないのではだいぶ差が出てしまう。更には、武器や戦いの熟練が違っている。ユドにとって単純に戦っても負ける相手であり、その相手は有利になれる要素、PPTを持っている。そして男が上半身に着ているスーツは、霊的にも物理的にもある程度の防護機能があった。
 だんだんと劣勢に落ち込んでいくユドを見ながら、床に倒れているマークは痛みで咳き込んでから言った。

「僕が、どうにかしなくちゃ……」

マークは一応いたぶられただけで、まだ動ける。この状況は一対一ではなく二対一なのだ。戦うために動かせるような体でもないし、霊力だってまともに回復しきっていない。助けを呼んでも遅いかも知れないし、上の騒がしさではそもそも声が聞こえないだろう。収容所を巻き込むわけにはいかない。劣勢を覆すには、マーク自身がどうにかしなくてはならないのだ。
 ユドはリーチを活かしながらどうにか相手に傷を負わせようとするが、出来ない。一度槍は届いたが、スーツの中にある霊律鉱が露出し、傷ついたただけだった。スーツが重いので、ユドにとって離れながら戦うのは正解なのだが、PPTを構えられるたびに回避行動をとらなくてはならないのもあって、とにかく体を動かし続けるしかない。一方、スーツのせいで動きが鈍重でもじわじわと相手を動かしながら消耗させている男は落ち着いた動きで対応しており、まだ息に余裕がある。ユドはこの状況に焦ってしまい、より息が乱れる。ユドの不利は加速度的に進行していった。
 痛みから回復してきたマークがどうしたら助けられるのか考えようと、必死に周囲を見る。ユドと男は動き回っていて、心術を当てようにも当てにくい。下手をすればユドに当たってしまうかもしれない。しかし、ただ普通に戦おうとしてもすぐやられるだけだ。だから何か確実に当てられる霊的現象、もしくはそこから発生する物的現象を探す。
 状況を注視するうちに、男とユドの動きが少し変であることに気づいた。男は背中の階段の途中にあるケーブルを守るように戦い、ユドはどうにかケーブルのほうへ向かおうとしているのだ。恐らくユドがケーブルを利用しようと、男がそうはさせまいと動いているのだろう。スーツはケーブルと完全に繋がっており、必要なときに着て、貯蔵器本体に接続するのだ。体により霊力を取り込みやすくすることを考えた構造をしており、非常に脱ぎにくい。一度着れば戦闘中に脱げるような代物ではない。防護機能はただの副産物であり本来の用途とは全く違っているので、このように白兵戦を行っているときに身につけているならば何らかの不都合が発生する。もちろんそれはケーブルのことで、ユドと男はそれを分かって戦っている。
 マークもそれを狙うべきだろうが、距離が遠すぎる。男が塞いでいる階段へどうやって上ったらいいのか、それを考えなくてはならない。ユドと二人でかかったところでどちらかが殺される可能性が高い。どうにかマークが一人で気づかれないようにケーブルに近づいていく必要がある。
 マークはその後のことも考えた。ケーブルに近づいて何をするのか。引っ張れば相手をひるませることが出来るはずだ。しかし引っ張るにはケーブルの位置は遠い。ならば他に利用法が無いかを考える。ケーブルには、先ほどマークがつけた傷が残っていた。

「そうか……!ケーブル内に霊力を送り込めば……」

そしてユドがつけた、スーツの内部の霊律鉱の傷を見る。少々粗いが、現象紋にも似た傷だ。その傷は皮肉にも、男が先ほどまでかなり使っていた冷素を送ると運動を遅くする紋であった。
 マークはなりふり構わず、床からケーブルの傷のほうへ手を伸ばし、思いっきり冷素を飛ばす。ケーブルの、貯蔵器に接続する側の穴から氷が出てくるのと同時に、男の動きがとても鈍くなる。

「ユドさん!今です!」

ユドは一瞬戸惑ったが、マークの声を聞いて槍を男のスーツに保護されていない急所、首の辺りに突き刺した。槍の狙いは少し甘めで、体の中心から若干右寄りに刺さっていたが、首に深く刺さっており、絶命させるには十分な傷だった。男は、遅延した感覚の中で死の感覚を長く味わい続け、既に事切れてから時間が元に戻り、床に倒れる。

「おい、今の何だったんだ?」

 槍を手から離し、息を切らせながら床に崩れるように座り込んだユドが言った。しかしマークは、自分の意思で人を殺す手助けをしたという事実に息を詰まらせており、それどころではない。それに心配したユドが声をかけようとするが、彼には何を言ったらいいか分からない。とにかく何か言わなくては、と口を開く。

「お陰で助かったよ」
「いえ、ユドさんがあのスーツに傷をつけてなかったら出来なかったですよ。それに、かなりリスクのある行動でした」

それに対して、マークはたどたどしく先ほどやったことの説明をする。
 現象紋のみでも、心術は起こせる。しかしそうした場合、心術の範囲や指向性は滅茶苦茶になってしまう。男は確実に止められるだろうが、ユドも巻き込んでしまう可能性があった。その時はその時でマークはケーブルを掴みに向かおうとしていたが、危険な行動だったことは明らかだ。それに、さっきのような偶然ついた傷では粗すぎてもしかしたら別の霊的現象も起きてしまうかもしれなかった。
 マークがそう、自分の軽率な行動を後悔しながら説明する。男の殺害の手助けをしたこと自体も後悔するべきことであったが、ユドも殺すかもしれない行動だったのだ。

「結局は助かったからいいじゃねぇか。それじゃあ、俺はまた、上へ行くぜ」

それでも、マークはあまり他人の好意や善意、優しさに甘えるのは良く無いと思った。そして結果が全てと、彼は思いたくなかった。マークが必死に勉学を積んできた結果がこれなのだから。
 槍を手にとって、ユドは再び上へ向かおうとした。すると、上から歓声が聞こえてきた。

「俺達の勝利だ!」

 その声はケヴィのものであった。手に取った槍を、再び床に落としてユドはひざに手を当てる。その表情には安堵が浮かんでいた。

「どうやら終わったみたいだ」
「はい」

マークも青ざめてはいるが安堵の表情を見せた後、すぐに立ち上がって上へ向かう。

「怪我した人に手当てをしに行きます」
「俺も向かおう」

ユドがそう言って、立ち上がろうとするが中々立てない。ユドは照れ、笑う。

「すまん、腰が抜けたみたいだ。後から行くわ」

のんきなもんだ、と独り言を言ってから喉を鳴らして笑うユドに、マークは了解の意を伝える。そして階段を上り、甲板へ出た。相変わらず凄惨な状況で、素直に勝ちを喜べるような光景では無かったが、ひとまず助かったことを思うと少しは嬉しくなる。先ほどとは全く別の騒がしさで満ちる夜明け前の甲板で、マークは応急処置に走った。

「数々の仲間の犠牲の上に、俺たちは勝利を掴むことが出来た!」

船室の前で、ケヴィが声を高らかにあげて叫んだ。マークには内容が分からないが、勝利を喜ぶものなのだろうと予測がつく。
 叫んでいるケヴィの後ろにあるドアが開いた。それは当然、ケヴィたちの側で戦っていた人間が出てくるためだろうと、考えるまでも無くそうだと思える。しかしそれは違った。

「ぬぉぉう!?」

ケヴィが素っ頓狂な声をあげて、何かに引き寄せられるように空中へ放り出され、地面にしりもちをつく。そして、ドアから出てきた男ががなった。

「てめぇらうるせぇぞ!寝てられるか!」

そう言われ、場が疑問で止まる。疑問を持ったのは向こうも同じらしい。

「お前ら誰だ!?」

ドアから出てきた男が驚いて叫ぶ。ケヴィは投げ出されて痛がっていたが、状況を理解して皆に指示を出す。

「まだ敵がいたぞ!相手は一人だ!かかれ!」

 マークは、まず呆れの感情を最初に出した。船室の中を確認していなかったとは、凄まじいくお粗末だ。誰か気がつかなかったのか、そう思えて仕方がないという表情をする。しかし一人なのですぐ捕らえられて終わりだろう。そう思っていた。

「隊長!そいつら反逆者たちですってば!」
「あぁ!?本当かよ!」

 二人目が出てきて声をかけられると、一人目の隊長と呼ばれた男は眠そうだった目つきを変えて臨戦態勢に入った。しかし二人であろうとこの人数の前では多勢に無勢。すぐにかかろうと近づこうとした男たちが吹き飛ばされる。
 マークは、隊長の顔にある模様に気づく。その模様は形も太さも不規則で乱雑な線。マークが思わず呟く。

「混素霊人……」

他の男たちもそれが分かったのか、焦ったような緊張感のある顔をしている。
 それとは対照的に隊長は余裕そうに部下と思われる男に話しかけた。

「何で起こさなかったんだよ」
「起こそうとしましたけど、隊長が全然おきなかったんです!」

隊長がマークたちのほうへ目線を合わせると、自信たっぷりに、同時に面倒くさそうに笑いながら言う。

「結局、こいつらを全員殺せばいいんだろ?」
「違いますって!実験台だから、捕らえなきゃいけないんです!」
「面倒だな。そもそもこうならないようにすればよかったんだよ」
「そ、それはそうですけど……」

 目の前で話されていたのが気に入らなかったのか、ケヴィがもう一度指示を出した。

「霊人だろうと数の前には関係あるか!秩素だ!秩素で攻撃しろ!」

そう言われ、男たちが秩素を放ったり、紋を組んだりする。マークも加勢しようと、紋を組んで攻撃した。全員でかかれば勝てる、そう考えた結果だ。
 霊人に、その霊人が突出して持つ性質子に相反する性質子を直接ぶつけることで、その霊人の性質子は減る。ある一定まで低く出来れば霊人の精神は崩壊し、意識の無い人間と化す。この場合は秩素である。それに、秩素を放っておけば心術によって回避行動を取られることも無い。霊人が常人の感覚を超えて操れるのは得意分野の性質子のみだ。常人程度の霊力で大勢から放たれる性質子や心術を避けきることは不可能なのである。

「うざったい」

 無関心そうに、ただ虫を払うかのように隊長の周りへ混素が放たれた。隊長に迫る秩素は即座に相殺、霊的現象もかわされるか防がれるかで届くことはなかった。それどころか、全ての攻撃を防いでなお有り余る性質子をケヴィたち全員に伸ばし、逆に攻撃してくる。
 大量に放たれたことで紫に発光する混素がマークの目の前に迫り、マークは恐怖と驚愕と焦燥で歯を食いしばって目を大きく開いた。マークの前に居た男たちは既に混素を受け、発生する霊的現象に苦しみの声をあげている。マークの喉が思わず鳴って足を一歩下がらせる頃には同じく彼の回りも混素に満たされる。そして霊的現象が発現した。
 他の人と同様にマークは甲板に押し付けられ、身動きが一切取れなくなる。押し付ける力は強く、苦しい。床は軋んで音を立て、かかっている力の大きさを示していた。仰向けで倒れているマークはどうにか抵抗しようと起き上がろうとするが出来ない。
 その混素は操作の正確さ、量の多さ、展開する速さ等、どれをとっても常人を超えており、とても一人や二人で対抗できるものではなかった。隊長はケヴィたちが万全の状態で全秩素を集めてやっと勝てるかどうかであろうという量を放出しても全く疲れを見せない。

「あっけないな。このまま全員気絶させるからこのまま運べ」

 特に大したことをやっていない風に喋る隊長に対し、呆けながらその部下がそれに了解する。
 甲板の上で苦しむ男たちの声は徐々に止み、意識が消えていることを表している。マークにはまだ意識はあったが、喉も押し付けられているせいで息すらまともに出来ていない。彼はひたすら苦しみから解放されたいとあれこれもがこうとするが、全て無駄に終わった。出来ているとしても残り少ない秩素を喉の辺りに放って息苦しさをわずかに、ほんのわずかに解消するぐらいだ。

「あー、今どの辺りだ?もう夜明けだろ?」

 隊長は船の乗っ取りを企てた人間たちを抑えながら東のほうから明るさを感じ、気になったのか部下に現在の位置を確認しようとする。そう聞かれて部下は空を見上げた。夜明けで星が少ないが、位置を考えてから困って言う。

「鎮圧をずっとしてたので、大分ずれたみたいです」
「ふーん。で、どの辺?」

部下は今のやり取りの間に位置を考えていた。そして今自分たちがいる場所に気づき、焦ってすぐに報告しようとしたが、それ以上の異変が部下のほうを向いている隊長の横から迫っていた。

「たっ!あぁぁぁぁぁッ!!!」

危険を伝えようと隊長、と呼びかけようとしたが間に合わずに奇妙な叫び声になってしまう。
 東のほうから、夜明けの陽光とともに甲板を横切ったその光は、激流のように直線に走って隊長を船の外、それどころか水平線の彼方へと勢い良く、すごいスピードで押し流していく。
 その直後、マークたちの周りにあった混素が現象を発現させて消え去っていった。マークはささやかな抵抗のお陰でまだ意識があり、打ちひしがれたようなつぶやきを聞く。

「カーロッシャ……」

 消耗して起き上がれないマークには、朝日のほうからやってくる船が希望の象徴に見えた。









つまりはなかがき

危ない。主人公を精神的にボコボコにしたり身体的にボコボコにしたりするだけの回になるところだった。
3回ものイベント戦、うち2回は負けイベントというオープニングもどきが終了した先に何があるのか、ノリで書いているだけなので全く分からない。


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No title

ロジェリシャットさん名前しか出てませんね。ロジェリシャットさん……。

まあ、アドラスさんが楽しそうだったのでなによりですはい。
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しなび。

Author:しなび。
なんていうか、もうどうにでもなーれ☆

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